小引き工程

カケバ(掛け機)工程で8の字に綾掛けされた素麺は寝櫃(室)に入れられ熟成(掛け機工程で引き延ばされ、撚りを掛けられた素麺の構造緩和のために2〜3時間の熟成)され、次の小引き工程に移る。
今はほとんどの生産者が機械で小引きを引いているが、昔(昭和50年代半ばまでは)ほとんどの工場で手作業で引いていたのである。この工程が機械化されたことで就業時間が短縮されたのはもちろんだが、腰痛で辛い思いをしていた多くの生産者が喜んだものです。
一方機械化は大規模生産を可能とし、この工程の後の門干し工程の機械化もあり、全行程の自動化が驚くほどのスピードで進み、工程は手延べの工程だがほとんど流れ作業でできてしまう「手延べ風機械麺」と言っていいような粗悪品ができた。
基本的に手作業で素麺の熟成に合わせて無理なく少しずつ50〜60cmくらいに引き延ばします。
これまでの工程の緊張と緩和がグルテン構造の進展、伸長性をますます促進させて食味食感の優れた素麺となる。
こうして小引きした素麺を2つ折りにして更に2〜3時間の熟成を取る。
ここで小引き工程は終わりですが以下に私のやっていることを紹介します。
 寝櫃で約2時間の熟成 1度引き、2度引きをこのように手作業で行い、
その都度15〜20分の熟成時間を取る。
手前:引く前(2時間くらいの熟成)
後方:1度引き後
手前:1度引き後20分くらいの熟成をして2度引き後方:2度引き
3度引き 場合によっては更に10cm位軽く引き、
20分ほど熟成をして小引き引きで引く。
無理のない状態で小引き引きの機械で長さを
一定に引き延ばす。
「小引き」を引いたものを折りたたみ、2時間〜2時間30分の熟成を取る。 充分な熟成後
門干し工程「ふくろ引き」「箸分け」作業に移る
小引き工程順
私も腰が悪いのですべてを手作業で行うことはできませんが、機械を使っても手作業以上の麺の状態にするにはどうすればよいのか検討して以上のようにやっています。
(注)JAS規格、表示法改正案では手作業について詳細な規定はなく、成案となった後にどういう解釈がなされるのかは不明(これもおかしな話)だが、農政局の役人は個人的な意見ですがと断った上で「これは手作業だと思います。」と言われた。
つまり昔ながらの手法(技術)を残して手延べ本来のものを伝えるため、さらによいものを伝えるためのJAS規格、表示法改正であって近年の全国的な「手延べ風機械麺」への警鐘である。
私たち生産者は初心に戻って「手延べ」を伝えていくという認識を持とう。
今のままでは後継者も望めないし、跡を継がそうとも思えないのではないですか?
確かに収入の問題は大きいですが、この改正案は私たち自身がゆがませてしまった道を修正する機会を与えてくれたと思って考えましょう。

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