オデ工程 イタギ工程 ほそめ工程 掛け機工程 小引き工程 門干し工程
塩見製麺所 熟成と厄 加水量と塩 褐変現象と防止策
O 加水量と加塩量の手延べ素麺に及ぼす
(物性及び食感の)影響について
多加水について
私は手延べ素麺における多加水というものは50%程度であると認識している。
多加水に関する報告では大抵機械麺の研究をされている方で、手延べに近づけるための研究をしておられるようです。だから多加水を低く45%とか40%とかに設定して多加水多加水といわれる。「多加水」の言葉を使いたいのはわかるが消費者が誤解するような表現はやめてほしいものだ。
「加水料が多くなるほど混練による、グルテンの形成が発達するため、圧延では無理が利かなくなり、熟成、つまり、応力の緩和の必要度が、増大するからである。」「多加水生地を圧延、或いは延引する場合には、緩和(熟成)時間を充分に取らないと無理を生じ、生地が荒れたり麺線が切れたりする。つまり思うような圧延や延引ができない。このように多加水製麺にとって、熟成は不可欠のものである。」
加水40%以下程度の機械麺ではそうかも知れない。加水50%以上の私の作っている手延べ素麺ではこのような理解を超えています。
つまり40%加水を多加水と称し、そこまでの試験研究しかやっていないのに「手延べの製法云々」はおこがましい。
賢明なる諸兄はこういった加水料の低い機械麺製造業者の一方的な論文に惑わされないようにしてください。
多加水にすることでグルテンの構造は微細な構造になり、澱粉粒子を細かく包み、後の「厄現象」とも相まって食味食感への影響は大である。
多加水といってもパンに使うように60〜70%といった加水はできないわけで、反対に40%程度の加水でも手延べの作業はできないのである。
手延べ素麺の製造においては、加水は50%前後加塩は5〜8%のわずかな振幅を四季折々の天候に合わせ調整して製造にあたっているのであるが、それでも難しい。
わずかな違いでも人間にとっては食味食感は大いに違うのである。
塩について
塩を入れていない麺類は名古屋の「きしめん」とか東北地方の「打ち込みうどん」とかありますが、大抵の麺類には塩を入れています。
それは塩を入れると乾燥中に麺が割れにくくなり品質が上がった。
更に食味食感が向上した。
塩の量を加減していったのである。
それは「温度」「湿度」「風」などの気象条件を相殺し、一定時間後にちょうど良くなるように加減をしたのである。
そしてどんな条件下でも一定量より少なければ「硬くぼそぼそ」して(凝集性が強い)おいしくないことを経験から学んだのである。(小豆島手延べ素麺では5%以下での製造はしないようにしている。)
(私はどんなに少ないときでも5,5%までである。)
また反対に8%も入れると乾燥仕上げた素麺が非常に硬く見ても触ってもちょっと品がない。(麺の凝集性は低いので食べればおいしくいただけます。)更に塩は吸湿性があるので高温多湿の夏場には貯蔵中どんどん水分を吸ってますます硬く岩のようになる。一方でこのことは加水分解による遊離脂肪酸の増加によるタンパク質、澱粉への影響(厄現象)を考えると食味食感を向上させるんではなかろうかと推測する。(私は多くても7%強までの塩の量です。)それは手触りがボキボキしているのは美しくないからです。
四季の温度湿度の変化に伴い塩を増減させることはその食味食感を若干変えたのだろうが、作業性を一定になるように調整することで生地の抗張力がほぼ一定になるようになってそれほどの変化が起きなかったものと思われます。
塩を入れることの効果
- グルテンを引き締める。
- 澱粉を分解するアミラーゼ、タンパク質を分解するリパーゼといった酵素の働きを抑える。
- 吸湿性があって、急速な乾燥による麺割れが起こりにくくなる。
- 細菌の増殖を抑える。
- 食味食感が抜群に良くなる。
塩が少ないと効果が少ないことがわかっている。
従って塩は5〜8%の間で使った方が麺にとってより良い効果が得られるといえます。
加水量と加塩量の関係について(児島等 日食工誌、95)
加水量の増加に伴い太い繊維性の網目状構造から澱粉粒子を細かく包み込む微細な網目状構造に変化し、一方で塩の増加はこの逆の効果をもたらしたとある。
更に加水量、加塩量の条件を制御することで品質の良好な麺の製造が期待できる。とあり、上記したことが試験研究でも方向として裏付けられたといえる。
その適正な量というものは職人は長年の経験からくる勘で(その家の作業性も考慮して)決定しているが、手延べの研究というものは研究室でできるものではなく、私は未だそういった論文を見たことがないが(あれば読みたい)、「手延べ素麺ではこのようにやっている。」ということから手延べ麺の機械麺と比しての研究から類推されるにとどまっていると思われる。
手延べの研究をされている方は全国に数多くおられますが、本当に手延べの研究をするのなら手延べ生産者と協力してすべての段階であらゆる方向から検討、試験研究するべきだと思います。
卓上の理論で類推し、考えられても実際に50%以上の加水でどの様にされているのか、どの様になっているのかわからんだろう。もっと研究室から出てこいよ。
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