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塩見製麺所 熟成と厄 加水量と塩 褐変現象と防止策
手延べ素麺における褐変現象
と貯蔵及びその防止法について
褐変現象には製造しているときの乾燥中に起こるものと貯蔵中に起こるものがある。
1,乾燥中の褐変
- 加熱…高温乾燥
- 酵素…小麦粉中の成分が変化した(ポリフェノールオキシダーゼ)
- 化学的…アミノカルボニル反応(常温での保存では少ない)
2,貯蔵中の褐変貯蔵中の褐変は油脂の酸化が関係している。
- 高温少湿貯蔵
- 製造工程における油脂の過度の塗布
- 厄現象に伴う油脂の酸化(2回厄後に顕著)
手延べ素麺においてはその製法上油脂(ごま油)の塗布という褐変現象を起こす工程がある。
そして油脂の変色は分解によるものと油焼けによるものがある。
手延べ素麺では(新原等の厄の研究過程で)水分が存在して油脂が加水分解され遊離脂肪酸の増加が確認されています。それがタンパク質や澱粉に作用して(一様ではないと思われる)変化が起こる。
水分が多ければ油脂の酸化は少なく、水分が少なければ(乾燥状態)澱粉は油脂の酸化を促進し、タンパク質は反応を抑制することが報告されています。
したがって手延べ素麺は油脂、澱粉、タンパク質があってなおかつ乾燥製品ですから、更にその上油脂の種類、量などあって褐変現象は一様とは思えない。
多田正敏先生には何度かお話をお伺いして勉強させていただきましたので、先生の研究による「手延べ素麺の保存温度と性状変化について」紹介させていただきます。
3月末に素麺を入手
5℃c、常温、30℃c、40℃cで3ヶ月後、6ヶ月後にPH,酸度、水分%、エーテル抽出物酸価、色調(黄色度、赤色度)を調査した結果です。(表による個々の値は省きます。)以上の結果から手延べ素麺を貯蔵した場合、麺自体は酸性側に移行し、赤黄色に変化するが、順次その傾向が進むのではなく、2〜3ヶ月後に一度PHの上昇、酸度の低下、色調の退化等むしろ逆の傾向が見られ、その後再び酸度の上昇と色調の増大が現れた。また保存温度の高いほど黄変度は高くなり、黄変した麺はエーテル抽出物の上昇と共に麺自体の酸度も高くなった。
- 水分状態は6ヶ月後でも12〜13%と当初に比べて大きな変化はないが、40℃区は高温のため低くなった。
- PHと酸度:途中少し変化はあるが酸化への傾向を示した。
- エーテル抽出物酸価:5℃以外は高い値を示した。
- 色調:赤色系統の色度は3ヶ月後にやや退色するが6ヶ月後にはかなり濃くなった。黄色系色度も6ヶ月後には肉眼でも黄変していることが認められた。
先生はごま油と大豆油についても調査しておられ、ごま油は黄変しにくいことを発表しておられます。
貯蔵温度が5℃では4ヶ月後でも黄変現象は見られず、常温以上においてみられたとある。
但しこのことは「厄現象」という立場に立ってのものではないので、一概に貯蔵をこうしなさいというようなものではない。
というのも大豆油は酸化分解されやすく、タンパク質との作用によって、いわゆる「厄現象」が起こりやすいのだが、黄変防止の意味からすれば分解されにくいごま油が好ましい。
その塗布量についても多すぎると黄変現象を強く起こすので作業に問題ない程度に薄く、更に「厄現象」は麺表面で起きるので麺の中にまで油が入るような事のないように作業することが肝要です。
手延べ素麺の黄変現象とその防止法について(その他の処理効果も入れて)総合すると
油脂の酸化、分解によるいわゆる油焼け現象に類似した原因による。
その防止法としては
- 低温による保存。
- 油脂の使用量を少なくすること。
- 酸化油(酸敗油)の使用を避けること。
- 大豆油よりも、ごま油ついでは菜種油が望ましい。
- 抗酸化剤としてはヴィタミンE(V・E)が効果が大きい。
しかし手延べ素麺には(新原等の研究のように)「厄」という現象があり、食味食感に多大な影響を及ぼしていることからみて、黄変防止策とは相殺する結果を生じ、黄変現象は厄に伴う副作用であるといえる。
したがって現段階では「厄」と「褐(黄)変現象」の両方をクリアーするものはないといえるが、あえていうならば、先ほども言ったように
1,作業性に影響しない程度にごま油の塗布を少なくすること。
2,酸化しにくいごま油を使うこと。
3,高温での貯蔵は避けること。
で1回厄後まではかなり防げるのではないかと思われる。
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