遍路の話

8    バイク遍路 その2

                        写真は青年大師像
 
83kmの道のりもバイクで来れば楽しいツーリング、歩き遍路たちの姿は室戸岬までの道中で視界に入らないことがなかったほどです。中にはびっこをひきながら歩く若者もいて痛々しいほど、そこまでしなくてもいいんじゃない?と言ってあげたいくらい、私は神様から頂いた自分の肉体を故意に痛めつける苦行というものは好きではありません。宇宙の創造主はそういうことを決して喜ばないと思います。肉体は労わらなくてはならないと思っています。
 
ともあれ途中には何もなくここまで来てしまったら何が何でも室戸まで到達する以外ないでしょう。やがて右手に巨大な青年大師像が見え、ほどなく弘法大師が求聞持法を会得したという御厨人窟に着きました。ここで大師は修行して虚空蔵菩薩の真言を唱えているうちに明けの明星が口の中に飛び込んだということです。虚空蔵菩薩は宇宙に充満する知恵の仏様でその真言を唱える事によってアカシックレコードにアクセスすることが出来るのだそうです。アカシックレコードとは宇宙の全情報が記憶されている貯蔵所のような所だそうです。
 
室戸岬の東側は荒々しく陸と海の力がせめぎ合うところ、海か崖かという場所で平地は殆どありません。海が道路のそばまで来ているのでもし津波が来たら一瞬のうちに飲み込まれてしまうでしょう。巨大な海のパワーと常に向き合わねばならないところです。24番の最御崎寺は山を登ったところにあり多くの遍路がお参りに来ていました。すぐ下に室戸の灯台がありそこから太平洋が見渡せます。25番の津照寺には次のようなエピソードがあります。「土佐藩主が室戸沖を航海したとき嵐に見舞われ遭難しかけた。そこへ忽然と僧侶が現われ舵をとって港まで船を導いてくれた。あとで殿様はどの寺の僧侶かと思い後をつけたら津照寺に入っていく。仏の加護を感謝して本堂を礼拝するとそこにびしょ濡れの地蔵菩薩が鎮座していた」というわけでこの寺の本尊は舵取り地蔵尊と呼ばれ地元の船乗りや漁師の信仰を集めているそうです。
 
次の金剛頂寺も参拝し終え私は予約してあった室戸市内の宿に入りました。そして風呂へ行くと一人の中年男性に会いました。話を聞けばこの春定年退職した後、思い立って四国の歩き遍路に来たのだそうです。ところが途中から膝が痛み出してやっとの思いでここまで辿り着き、すでに1週間この宿で養生しているとのこと。これ以上進むのは無理なので明日家に帰るのだそうです。聞けば日ごろから殆ど歩いたりしていなかったという事です。山歩きなどで歩き慣れている人ならいいけどいきなり歩き遍路に出るというのはあまりに無謀な事でしょう。大体この室戸で歩き遍路は振るいにかけられ、挫折するかそれを乗り越えて続けるかに分かれるのだそうです。焼山寺、鶴林寺、太龍寺の山の難所でしごかれやっと太平洋が拝めたと思ったら延々83kmの室戸への道、通しで四国を歩いて周るには普段山歩きで鍛えている人は別として相当な下準備が必要、決して安易な気持ちで挑むものではないでしょう。
 
 
 
 
 
 
更新日時:
2008/02/03

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Last updated: 2008/2/26