11月も終わりに近い週末、私は2人の子供と一緒に但馬海岸の方へツーリングに出かけた。バイクは次男の乗るヤマハのWR250X、長女がヤマハのトリッカー、私がカワサキのスーパーシェルパという250cc3台である。WR250Xは最近流行のモタードというジャンルのバイクでモトクロッサーのようなスタイルをしてレーサーのようにエンジンが吹き上がり軽量な車体で鋭いコーナリング性能を持つある意味過激な若者向けのバイクである。シート高が高いのである程度の身長がないと止まった時に足が地面に届かない。またシートも細くて固くゴツゴツと地面の振動が伝わってくるので、私の場合長時間このWRに乗ると腹の手術の跡に響くような気がする。とにかく高性能で走ることに主眼が置かれているので荷物を積む場所がない。
長女の乗るトリッカーは軽量で細身、バッタを思わせる斬新なスタイルをしている。とにかく細くて見た目にはこれが250?と感じるがエンジンは力強くて信頼感がある。車体が軽いので加速は車を置いてきぼりにできるだけのものを持っている。トライアルバイクに近いのでどんなに細い所でも入っていけるし、荒れた道も苦も無く走破できるが、フロントが軽いので高速道路ではふらつきを感じることがある。このバイクもスタイル優先なので荷物を積むのに苦労する。が、ヤマハのデザインはいつもながら国産のメーカーの中では一番センスがある。
私のシェルパ(カワサキ)は完全にオフロードバイクの格好をしているが飛びぬけた個性はないかわりに用途を問わないオールラウンダーである。エンジンパワーもそこそこありどんなところを走っても対応できる安心感がある。荷物も充分積めるし乗り心地もソフトで中高年には向いている。欠点は始動が悪い事であり、しつこいくらいアイドリングをしないとエンストしてしまう。急ぎの時には車の方が早い。こいつをアイドリングしている内に近い所なら車で目的地に着いてしまう。しかしそれ以外には悪い所は見当たらず私はシェルパを気に入っている。時折これで日本一周をしたという話を聞く。地味だがツーリング向きのバイクで評判は良いがカワサキは現在生産中止にしてしまった。
バイクに興味の無い人にとってこういう話はぴんと来ないに違いない。しかし我々はそういう乗り物に乗って旅をすることにしたのである。非力で(非力でないのもいるが)小さな250ccのバイクは交通弱者、風雨にさらされて旅をするのも贅沢に慣れすぎた現代社会においては意味があり楽しいものである。金曜日の午前、仕事を素早く切り上げ(昔からよくやってきた)荷物をバイクの荷台に縛りつけ私は長女と共に大部港へ向け我が家を出発した。日生行きのフェリーに乗るためである。日生で“かきおこ”(牡蠣の入ったお好み焼きで日生名物)の昼食を済ませ赤穂インターから山陽自動車道に入る。高速は空いていたが何しろ250のカウル無しのバイクは100km以上スピードを出すと風圧がすごいしアクセルを開けてもせいぜい120kmくらいが精一杯なので左車線を80kmくらいでゆっくりとクルージングするしかない。100km以上の速度での追越は無理である。トンネルを出たところではよく横風を受けるが軽いオフロード車は不意に横風を受けるとバランスを崩しやすいので注意が必要だ。それと左の車線を走っていると右の追い越し車線を大型トラックがゴーッと追い越していくが、そのトラックの大きな黒い影が後ろから迫ってくるのは不気味なものだ。追い越される時はその風圧で思わずふらつきそうになる。
高速を100kmくらい走ると風圧と緊張感で結構疲れてくるものだ。そして体が冷えてくる。冬が近づいているこの時期は十分な寒さ対策が必要である。私はヘルメットの下にカナダで買ったスキー用のフェースマスクを被ってみたがこれは顎のあたりから侵入してくる風を防いでくれるので役に立った。マスクは真っ黒で自分がそれを被った姿を鏡で見るとテロリストみたいなのでびっくりする。何故か私はカナダ入国の時にも移民局の審査官からしつこく質問されるがそういう雰囲気があるのだろうか?
大きくてパワーのあるバイクなら余裕で高速をカッ飛んでいけるが小さなバイクはそうはいかない。昔はリッターバイクで高速をハイスピードで余裕で走ったものだが。でも今はシェルパで不足は無い。今手元にあるもので良い。我々はサービスエリアで十分休み、冷えた体を暖めその日の夕方には何とか兵庫県にいる次男のアパートにたどり着いた。トリップメーターをみると走行距離は120kmほどしか走っていない。車なら屁でもない距離なのだが結構疲れた。何しろ久しぶりのツーリングでしかも寒い時期は初めてのことだから。
手前がトリッカー、向こうがシェルパ
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