2      晩秋のツーリング その2  2010/11/20
 
翌朝早く起きて次男を含めた3人で出発の用意をする。夜露でバイクのシートはびしょびしょになっていたがこの時期は路上駐車しておくと車の窓ガラスも夜露で濡れる。例によってシェルパを思い切りチョークボタンを引いてアイドリングさせながら荷造りをする。シェルパはフェリーを下船する時も他の車やバイクより5分くらい早めに下の駐車デッキに降りてこの儀式をしなければならない。着岸間際に降りてきたらアイドリングの時間が不足し、慌てることになる。準備も整い我々は舞鶴自動車道を天橋立方面へ向けて北上する。休日でしかも連休にかかっているので早朝から車が多い。高速料金が無料なので尚の事家族連れの車が目立つ。
 
例によって250ccのバイク3台は左車線をクルージングするが車がピュンピュン抜いていく。中にはこちらがバイクと見て強引に前に割り込んでくるドライバーがいる。これはライダーにとって危険な事なのだが彼らは気づかない。自分もバイクに乗ってみればわかるのだが。バイク乗りは常にそういう事態に備えていなければならず、身をガードしてくれる物もないので腹が立っても我慢するしかない。丹波の山中にさしかかると霧が深くなり視界が悪くなってきた。時々スキーでそういう状態に遭遇するがカナダのSeventh Heaven を思い出した。ヘルメットのシールドが雲って一段と見難くなるが私の手袋は次男のスキー手袋のお古でスキーのゴーグルの霜をふき取るワイパーのようなものが付いていてそれが役に立った。ヘルメットのシールドは下手に手袋で擦ると傷がついて光を乱反射するようになってしまうのである。
 
高速は混んでいるし元来高速道路というところはバイクにとってはつまらないので、この辺の道に詳しい次男の先導で福知山で高速を折りて一般道を走る。交通量も少なく、適度にワインデイングがあり、のどかな晩秋の田園風景の中を走っていると気分が良くツーリングの楽しさを満喫できる。やがて天橋立に到着した。ここは古くからの観光地で海の中の砂州が陸地をつなぐ独特の景観で有名な所である。だが小豆島の瀬戸内海の繊細な諸島美を見慣れた我々の目には新鮮味を感じないし特に海が綺麗な訳でもない。
 
ここには元伊勢神宮があり、現在の伊勢市にある伊勢神宮はその昔この地にあったらしい。寄ってみると拝殿近辺には爽やかな空気が溢れていてこの場所が今はやりのパワースポットであることがわかる。但し観光客が多すぎて神気が損なわれているのは残念だ。天橋立には西国巡礼で知られた成相寺がある。私は前に2度ほど寄った事があり、寺から林道が延びていて上の展望台に行くと天の橋立の景観が一望出来るのでバイクで寺の横を通り過ぎようとするとハッピを着た寺の駐車場係りが出てきて「ここから先は有料でバイク一台500円やで」と言う。彼の印象が良くないし金を払ってまで行きたいところでもないので我々はそこでUターンした。あの寺は金の臭いがする。
 
ここはもう時代遅れの観光地になってしまったようだ。腹が減ったので食事の出来るところを探すが団体用のドライブインしかない。他にないので入ろうとしたら大型観光バスが入ってきて団体客がぞろぞろと降りてくる。バスの中で酒を飲んでいたようで酔っ払った様子の者が多い。ここは展望台への観光リフトの呼び込みをしたりしているが、今のツーリストはそういうものは望んでいない。結局我々はそこをパスして丹後半島一周のルートを目指す。
 
しばらく走ると舟屋が並んでいる集落に来た。舟屋とは桟橋の上に家を建てたような感じの漁師の家である。一階は海面の高さであり、船を停泊できるように一部のスペースに海水を導き、その上の階が住居になったこの地方独特の家である。入り組んだ入り江の中にあるので波が入らず湖のような静けさである。マリンジェットなど海の遊びをする者なら家からすぐに乗り出せるわけだ。水も澄んでいてそこから釣り糸を降ろせば何か釣れそうだ。こういう家は夏は楽しいだろうと思う。
 
そこからさらに走り浦島太郎ゆかりの浦島神社に行く。浦島太郎の伝説があるところでミュージアムもある。浦島太郎の伝説は儒教の影響を受けているとはそこの神職の奥さんの話である。近くには秦の始皇帝の命を受けて日本に渡ったという“徐福”を祀っている所もあったが、そういうエピソードが浦島太郎のストーリーの基盤になっているのかもしれない。今夜の宿は竹野に決めてあり、城之崎温泉の向こうなので日の暮れの早い今の季節、ゆっくりとしてはいられないので先を急ぐ。この丹後半島から但馬海岸一体の海岸線は太平洋とはまた違った色彩のブルーの海と、日本海の荒波に削られた迫力のある巨岩が並んだ独特の景観が楽しめるところである。道もやや狭いしワインディングが多いので車よりバイクで走ったほうがはるかに気持ちが良いと思う。途中おしゃれな喫茶店があり(次男のお勧め)そこに立ち寄って屋外のテラスで美味しいケーキとコーヒーを堪能した。
 
夕暮れが迫りみるみる暗くなってくるのでさらに先を急ぐ。目的地到着までに日はどっぷりと暮れてしまい、ふと空を見ると満月が寒そうに輝いていた。ガードレール下は絶壁なのでオーバースピードは禁物、確実にコーナリングを決め予定より約1時間遅れて宿に到着することが出来た。宿はダイビング専用の宿でこの寒いのに潜っていた客もいたが、丁度今は蟹のシーズンであり我々は冷えた体を風呂で暖め、新鮮な蟹と適度なアルコールで至福の時を過ごすことができた。疲れた後の宴、これもツーリングの楽しさだ。
 
 
下は波静かな入り江に並ぶ舟屋
 

更新日時:
2010/12/17
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Last updated: 2010/12/17