〜実践・事業の見直し(事業計画)〜


「事業計画」これはNPO法人設立のときの提出書類の一つになっています。今から設立を使用とする方は「設立書類と一緒じゃないの?」、設立されている方は「もうすでに作ったから必要ない」を思われるかもしれません。

しかし、私がここでいう「事業計画」とは、「所轄庁に提出するための事業計画」ではなく「今後団体が進んでいく方向性を明確にして、それを実現するための具体的な事業計画」のことをいいます。もちろん、「所轄庁に提出するための事業計画」さえ作成して、提出すれば法的には何も問題ありません。しかし、どれだけ具体的な目標を持ち、計画をしているかにより、その法人が今後発展できるかどうか大きく変わってくると私は思います。

法人の将来的な発展のための「事業計画」の作成をここでは解説していきます。


@団体として何を目指すのかを確認する
まずは自分達がNPO活動をするにあたり、何がしたいのかをもう一度見つめなおすことで団体としての方向性をはっきりとさせることができます。

<NPO活動をしてどうしたい、どうなりたい>
具体的な動機を書き出してみましょう。

例.バングラディッシュの農村部に病院を建てたい
   少しでも多くの子供に治療等を受けてもらって元気に成長して欲しい
   バングラディッシュ全域でしっかりとした医療体制が根付いて欲しい

<どのような信念を持つ?>
動機を見渡して、それらをまとめて一つの短い文章にしてみましょう。

例.バングラディッシュにあるカティンガ村(今まで病院が無いところ)に病院を建設。建設時に現地の人をスタッフとすることで雇用の確保ができる。また、将来的には常勤のドクターを雇用して何時でも対応できる体制を整えると共に、日本の母子手帳のようなものをバングラディッシュ国内に広めて、子供の健全な成長に役立つ社会を実現する。

<社会において担うべき役割は?>
より具体的な活動を明記します。
組織が何をして、誰に対して働きかけて、どのような方法で行うのか。

例.私達が行うことは病院の建設・運営を行うための支援活動及び地域の医療保健や教育、生活改善を行なう。方法としてはメディア等を通じての宣伝、イベントでの出店、募金箱を設置しての募金活動等を行うことで、より多くの人に知ってもらうことで資金を集める。


A現状の分析(組織について)
まずは「今」を知ることです。これを正確に把握していないと、今から行うことが全くの無駄になってしまう恐れもあります。例え些細なことでも問題点としてあげる必要があります。以下に例を示しますので、自身の組織に当てはめて考えてみましょう。

<人の問題点>
□効率のいい人の配置ができていたのか?
□足らない資源(人、物、金)の充足や問題解決のためのスキルはあるのか?
□財政状況の把握、会計の適正な処理はできていたのか?
□宣伝・情報収集などはできていたのか?
□事業活動に必要な専門的な知識をもった人は足りているのか?
□事業を行う際に必要な人材は確保できていたのか?
□今それぞれ個人が目標のためにやるべきことを具体的に把握できているのか?

<組織の問題点>
□理事会・総会の運営は定款に定めたとおりにうまく運営できたのか?
□問題に対して報告・連絡・相談はスムーズに行われたのか?
□会員に対しての連絡体制は問題は無かったのか?
□事業ごとの役割分担や責任分担は明確にできていたのか?
□事業の成果、反省などを記録として残しているのか?

<定款の問題点>
□会員の入会・大会の規定は適正だったのか?
□常勤のスタッフの給料・休日に関して問題はなかったのか?
□理事会・総会の定足数(総社員の○分の1以上の出席で…)に問題はなかったのか?
□経費(自動車や携帯の使用料)などは適正だったのか?


B現状の分析(組織外ではどのような状況であるのか)
これもAと同じようなことですが、組織を取り巻く社会的な状況を冷静に分析します。どんなに自分達がいいことだと言っていても、周りの協力なしでは目標を達成することは不可能だからです。

□国・県などがこの事業に対してどの程度の協力・協働が見込めるのだろうか?
□現在の社会でこの分野に興味を示している企業はどれくらいあるのだろうか?
□どこに行けばこの分野に興味を持っている人が多く集まっているのだろうか?
□同じような分野を行っている団体はどこにあるのか?
□またどのような運営を行っているのか?
□専門的知識を持っている人(法律家・マスコミ・会計士・コンサルタント等)とどのような係わりを持っているのか?


C現状の分析(対象・資源提供者について)
組織、取り巻く状況の分析が終わると最後はその事業を受ける受益者と、その事業を支える資源提供者についての分析です。ここまで分析をして初めて意味のある事業計画を作成することができます。

<対象について>
□受益者が本当に求めているサービスはいつ、どこで、何を、どうすることなのか?
□それを受けることによっての受益者のメリット・デメリットは?

<資源提供者について>
□資源提供者をどのようにして探しますか?
□資源提供者にはどのようなアプローチ(宣伝・広告等)を行いますか?
□その時期、期間、費用はどのようにしますか?
□資源提供者がいない場合、投資した費用回収はどのように行いますか?


D以上のことをまとめ、会員全員に周知する


このような「事業の見直し」はいざやろうとしても、時間がかかり、なかなかできないのが現実だと思います。しかし、これから法人を立ち上げようとするとき、又は年度末処理が終わったときなどの節目をいい機会として行うことで、法人の本来の目的を忘れず、より良い運営が行われるものと思います。自分達の団体のためにも、せめて1年に1度は活動を振り返る必要があるのでは…

☆当事務所では以上のような事業の見直しについてもお手伝いさせていただきます。お気軽にご相談ください☆



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