写真は四国遍路、室戸岬にて、後ろに金剛杖を挿してある
250ccで並列4気筒、14000回転も回るという高回転型エンジンを搭載、リアはリッターバイク並みの極太タイアを履かせた個性的なバイクで若者に人気があるモデルである。私はひょんな事からこの中古のモデルを購入することになった。250のオフロードモデルを日常の足代わりに買おうと思って行きつけのバイク屋さんに行くと結構程度の良いホーネットが置いてあり「安くしとくで」というおっさんの一言でまあこれでいいかという気になってしまったのだ。要するに何でもよかったのだ。暫く公道を走れるバイクは無かったので足代わりになるものが欲しかっただけであった。乗って見ると低速では重苦しいくぐもったようなエンジン音で冴えない。しかしアクセルを開けて1万回転近くになるとクオーンというF1のようなエンジン音になりその後も頭打ちすることなく12000回転くらいまで平気で上がる。
前のオーナーがマフラーを換えていたので一層排気音は響き渡る。体感的には150kmくらい出ているのかと思ってスピードメーターを見るとまだ100kmを超えたくらい。あれっという感じがしたがこのバイクはこの官能的な排気音と振動を楽しむものらしい。私はこのバイクで四国遍路をしたが次々と札所を回るうちに愛着を覚えるようになった。ある時は寺の駐車場に行くと「こんな奴が遍路なんかにくるの」?というような目で見られたが気にしない。気にしなければ無いのと一緒。ヘルメットを脱げば「ああなるほど」と思ってくれたんじゃないかなと一方的に解釈することにした。しかしこいつの高速走行はきついの一言、音と振動でエンジンのパーツが外れやしないかと心配になったものだ。
四国遍路のあと仕上げに高野山に行き高野龍神スカイラインを南下、熊野、那智大社、をめぐり潮岬、白浜と紀伊半島を半周した。一緒に旅をしてみると愛着が沸きいい相棒だなと思えるようになる。5年前に私は息子たち2人と車とホーネット一緒に紀伊半島を一周したことがある。伊勢でこいつのバッテリーが死んでしまい動けなくなりホンダのショップで修理してもらったことがあった。バッテリーを交換して無事に家に帰ったが後でよく見るとリアタイアの接地面がやすりで削いだようにフラットになっていた。バイク屋さんで交換のために外したタイアの接地面を指で押すとゴム草履のようにベコベコと引っ込むではないか。「あんた、ようこんなになるまで乗ってたね」とはバイク屋のおっさんの言葉だ。これで高速を走ってよく無事に家に帰れたものだと安堵した。ちなみに私はもっぱら車、バイクは息子たちが交代で乗って帰ったのである。そのホーネットも今はないが大手のバイク屋さんである下取り価格で取ってもらって暫くしてそこを訪れるとなんとその2倍以上の価格であのホーネットが店に展示されていた。もちろんピカピカに磨き上げられていたがそれは5年前に行きつけの店で買った値段より高かったのである。
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