暗い。 知っていた事だが、ここはかなり暗い。 周囲の木々が、行く手を遮るかのように枝葉を垂らしている中、私は黙々と進んでいく。 | ||
ジャリ・・・ ジャリ・・・ ジャリ・・・ 聞こえてくるのは自分の足音だけだ。 自分の足音だけだろうか? 私は闇に向かって耳を傾けてみたり、立ち止まってみたりした。 どうやら自分の足音だけしか聞こえてこないようだ。 もし、自分以外の足音が聞こえてきたら・・・ それが背後から聞こえてきたら・・・ いや、シャレにならんから怖い事は考えないようにしよう。 それにしても、今夜もまた暑い。 ネクタイは外してきたのだが、汗でシャツが身体に張り付く。 だんだん息も上がってきた。 少し早足になっていたのかもしれない。 周囲に明かりを向けながら、歩く速度を落としながら尚も進んでいく。 ハァ・・・ ハァ・・・ ハァ・・・ おかしい・・・・ よく憶えていないのだが、こんなに遠かったのだろうか? 明かりを道の先に向けても何も見えない。 道を間違えたのか? 昨年の事を思い出してみる。 あの時もこんな感じだったじゃないか。 進めど進めど前方は闇、気が付くと突然トンネルが現れたじゃないか。 とにかく今は進めるだけ進んでみよう。 黙々と歩くというのは存外疲れる。 気を紛らわそうと思っても、話し掛ける相手もいない。 だが、逆に話し掛けられたりしたら某サイトに体験談を投稿しなければならない。 そういう事態にはならないだろうと思ったから、私はここにいるのだ。 この闇が永遠に続くかと思われだした頃、闇の中から滲み出すように突然ソレは姿を表した。 初めて見る人ならば、その光景に圧倒されるだろう。 もちろんここまで徒歩で来た時の話だが。 ここは、左右を木々に絡めながら車で来る事も可能なのだが、対向車が来た場合、絶対にすれ違う事など出来ない。 まぁこんなところに来る車なんて目的は全て一緒だと思うが。 そうやって車で来るだけでもかなり怖いのだが、徒歩の場合は 怖さが全然違う!! |
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視線を左側に向ける。 良かった。 お地蔵様の扉は閉じている。 その右隣、謎の 『牛之墓』 は、生い茂った緑の中に沈んでいた。 |
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遂に来てしまった。 昨年と同じ光景、ここは間違いなく 『中村トンネル』 だ。 ゆっくりと視線を右側、道の前方に戻す。 周囲の闇よりも更に濃い闇が前方で口を開けて私を待っている・・・ |
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