遥拝

  山頭火は、25番札所の津照寺(室戸市)は拝登していますが、26番の金剛頂寺、続く27番の神峯寺(安田町)は続けて「遥拝」で「お通り」をしています。この両寺は、ともに山の頂にあり、今でこそ、立派な車道が整備されているため、自動車で行くことができますが、当時はおそらく、険しい山道を徒歩で数時間かけなければ、お寺にはたどり着けなかったものと思われます。ある意味では「俄か僧侶の山頭火」にとって、お寺に行くことには、あまりこだわりがなかったものとみえます。海岸の道路から手を合わせ、参拝したことにしています。しかし、日記には『遥拝、すみません、恥じないではいられない・・・。』と後ろめたい気持ちを、そのまま記しており、山頭火の真面目な一面を垣間見ることができます。                    
(山藤花記)
あとになりさきになりおへんろさんのたれかれ
太洋漁業の捕鯨船で砲手を務めた泉井守一さんが、一代で8万頭の鯨を捕獲した記念と、その霊を慰めるため寄進した「鯨昌館」があります。館内には昔からの捕鯨用具や 鯨に関するさまざまな品が陳列されています。また鯨供養の石碑も建っています。
<26番札所 金剛頂寺(西寺)・室戸市>

 今日は数人のおへんろさんと行き逢ったが紅白粉をつけた尼さんは珍らしかった。何だか道化役者めいていた。このあたりには薄化粧した女はめったに見あたらない。清流(羽根川・室戸市)まで出かけて、肌着や腰巻を洗濯する。顔も手も足も洗い清めた。いわば、旅の禊である。こらえきれなくて一杯ひっかける。酒代は高いと思うたけれど、漬物をもらい、幾日ぶりかの新聞を読ましてくれたから、やっぱり高くはなかった。明日は明日の風が吹こう、今日は今日の風に任せる。好日好事だった。ありがたし、ありがたし。
(山頭火記)
水あり飲めばおいしく洗ふによろしく
 神峰寺は関所寺です。海岸沿いの国道を離れると遍路泣かせの "真っ縦"といわれる45度の急勾配になり、寺まで普通の脚で2時間はかかります。山門の手前右側にお寺なのに鳥居があります。山門をくぐると樹木のうっそうと茂る境内、参道をはさんで両側に鐘楼と庫裏が建ち、さらに石段を登ると本堂と大師堂が並んで建っています。写真は国道脇の松原から、神峯寺を遠望したところです。向かいの山に神峯寺があります。
<27番札所 神峯寺・安田町>