遍路犬

 山の上に第24番の札所東寺がある。堂塔はさほどでもないが景勝第一を占めている。そこで、私は思いがけなく小犬にかみつかれた。何でもないことだが、寺の人々は心配したらしい。私はさっさと山を下った。私としてこれを機縁として、更に強く、更に深く自己を反省しなければならない。しかし、四国の犬で遍路に吠えたてるとは認識不足だ、犬の敵性・・・。
(山頭火記)
しぐるるや犬と向き合ってゐる
 土佐路の遍路行は「修行の道場」と呼ばれ、最御崎寺はその最初の札所です。室戸岬からの険しい坂道を登りつめて山門をくぐると、境内には沢山のお地蔵様が並んでいます。
<24番札所 最御崎寺(東寺)・室戸市>
 昨日は犬にかみつかれて、考えさせられ、今日は犬になつかれて困った。どちらも似たような茶色の小犬だった。製材所の倉庫にもぐりこんで寝る。犬に嗅ぎ出されて困った。ろくろく眠れなかった。鼠に米袋をかじられた。絶食野宿は辛いものである。
(山頭火記)
夜の長さ夜どほし犬にほえられて
<四国犬>
 山頭火がかみつかれたのは、茶色の小犬だったようです。地元で飼われている「四国犬」は茶色、黒色のぶち模様の小型犬が多いようです。イノシシ猟をするので、柄は小さいけれど気が荒く、飼い主には従順な「闘犬」に並んで、土佐を代表するもうひとつの「いごっそう犬」です。その一方で、お遍路さんと一緒に旅する犬もよく見かけます。その「遍路犬」は「白の日本犬」でそれも鼻の赤い犬が多いようです。空海も修行の旅では、白犬を連れていた、という言い伝えもあり、お遍路さんと白犬というのは、何かしら機縁があるようです。乳母車を押しての遍路行には、犬が一生懸命引っ張って行く姿がみられます。途中で捨てられ、又拾われ、主が変りつつも、歩き遍路の後になり先になり、遍路を続ける犬もいます。
(山藤花記)
ついてくる犬よおまへも宿なしか
遠洋漁業の基地室津港のすぐ近くにあり、地元では津寺と呼んで漁業と安全航行を祈願しています。急な石段を登った所に本堂があり、そこからは太平洋を一望する事が出来ます。
<25番札所 津照寺・室戸市>