公認会計士・税理士・行政書士・ITコーディネータ 氏原明廣事務所日本商工会議所 EC実践研修講師認定 基礎コース 

 特定非営利活動法人ITCこうち 副会長  このたびNPO法人ITCこうちを設立してありますが、「NPO法人ITCこうち」では経営戦略策定など経営者研修会なども計画中であります。

やさしいITの活用と取り組み方
ITで進める企業革命 〜 中小企業のIT、第2ステップへ〜

CONTENTS
1, IT革命、第二段階へ
2, 個客商売を始めましょう
3, 知恵を共有する
4, ITC(ITコーディネータ)って何?
5, IT活用に利用できる制度

1, IT革命、第二段階へ

 〔1〕本当のIT革命は
 ここで改めて、"IT革命"とは何か考えてみましょう。小さなお店でも、パソコンが安くなって導入できるようになったこと。インターネットでホームページが出せるようになったこと。海の向こうの人とでもメールのやり取りができるようになったこと。たしかに、便利にはなりましたが、これだけでは革命とは呼べないようです。
 ITの時代はスピードの時代。ホームページを出して、商品を直接お客様に販売できるようになったこと。製造業であれば、ホームページで新規取引先を掴めるようになったこと。
インターネットでCADデータをやり取りして、納期までのリードタイムを短くできるようになったこと。少しは革命のように見えます。けれど、本当の"IT革命"はその先にあるのです。

"IT革命"の前に起きた産業革命によって、大量生産、大量販売の時代が始まりました。
そして、その時代が終わったことは、百貨店やスーパーマーケットの時代が過ぎたことで分かります。製造業も大手メーカーから、スピードや低価格化を求められているとは言え、「売れないものを、いくら効率的に造っても売れない」という現実が裏にはあるのです。
 かたや、チョコエッグのように、どうしてこんなものがというものが、大ヒットになっています。今や、お客様は、欲しいものしか買わないのです。
その代わりに、欲しいものであれば、いくらでもお金を出す時代です。
「大量に造って、大量に売る時代」から「お客様の欲しいものを造り、お客様の欲しいものだけを売る時代」への転換。インターネットは双方向が特徴です。"IT革命"とは、お客様の声を、ITを通じて聞く時代のはじまりなのです。

〔2〕 経営革命なくしてIT革命なし
 私達日本人は、今までバスに乗っていました。「日本・効率化大量生産号」という名前のバスです。このバスが、今やエンコして、私達はそれぞれが一台一台違う自動車に乗ってそれぞれの目的地を目指さなければなりません。ところが、この自動車には、ITというターボエンジンがついています。そこで、高速道路に出る前に裏庭で、運転の練習をしなければなりません。ところが、いつまでも運転の練習ばかりしていて、高速道路に出ることを忘れてしまう人がいます。

 この運転の練習というのが、パソコンを使えることであったり、ホームページを作ることであったりします。パソコンを使う技術は、最低限でいいのです。キーボードなど一本指で打てれば充分です。ホームページは文字と簡単な画像貼り付けが出来るようになれば、出発の資格は十分です。それよりは、どの方向に向かって走り出すかを決めなければなりません。今まで、バスが向かっていた方向には、すでに道がないのです。どの方向に向かえばいいのでしょうか。まず、ITを導入する前に、企業がどの方向に向かえばいいのか、改めて考えなおさなければならない時代なのです。バスを降りて、どの方向に行くのか真剣に考えてください。そして、ITターボつきの自動車の運転を覚えて出発です!

2, 個客商売を始めましょう

 〔1〕 ひとりの顧客と長くつきあう
 今までの時代は、どの業界でも、できるだけお客様の数を増やすということに努力してきました。しかし、出生率の低下で今までのように新規のお客様が、無期限に増えることは期待できなくなっています。
 そこで、今度は、ひとりのお客様に出来るだけたくさん買って頂く、ひとつの取引先に出来るだけたくさんの取引をして頂くことを考える時代になってきました。これを生涯価値といいます。ひとりのお客様が生まれてから亡くなるまでの間に、出来るだけたくさんの買い物をうちの店でして貰うという考え方です。

 以前は、ひとつの商圏で、どれだけ売上を伸ばすかということが目標でしたが、これからは、ひとりひとりのお客様の売上をどうやって伸ばすかということを目標にしなければなりません。そうすると、商売のやり方も変わってきますし、ひとりひとりの売上状況や個人状況を掴むための仕組みも必要になってきます。今までと違うやり方を、それぞれの商売で考え、作り出していく必要があるのです。

 顧客から個客へ。漠然としたイメージはあるでしょうが、具体的にどうすればいいのでしょうか。パソコンで顧客データベースをつくって、ポイントカードを導入して。それも必要かもしれませんが、あくまでも手段でしかありません。基本的な考えを知っておいてください。

■ ひとりひとりのお客様のことをよく知り対応する
まず、個客対応は、ひとりのお客様のことをよく知ることです。その上で、そのお客様が望むこと、望むサービスを提供します。それでは、お客様のどういう情報を知ればいいのでしょうか。それは、商売のやり方によって異なってきます。たとえば、年収は必要でしょうか。以前は、年収と暮らし振りが比例していましたが、最近はそうでもなくなってきています。年収は高いけれど、地味な生活をする人、逆の人、様々です。知る必要のない情報も多いのです。
■ お客様とのコミュニケーションをだいじにする
お客様のことを知るのに、インターネットや紙のアンケートで集めようとしても、なかなか 集まらないものです。お客様にとって、個人情報はだいじなもので、警戒心を抱かれる場合も多いのです。お客様の情報は、親密な会話の中で信頼を得て、自分のことを知って欲しいと思って貰えれば、それが一番なのです。
■ 「お客様のひとりぐらい」という考えを捨てる
個客商売では、ひとりのお客様の価値が非常に重要です。ひとりのお客様を失うことは、ひとりのお客様が 一生に買ってくださる売上を失うことと肝に命じてください。顧客データベースなどを作る前に、日々の店頭での接客、電話での対応に気を抜かないようにすることが、個客商売の第一歩なのです。
■ 既存のお客様をだいじにする
今までは、新規のお客様を獲得するために、チラシなどの宣伝コストをかけていました。既存のお客様をだいじにすることも、プレゼントや割引などコストはかかります。しかし、新しい顧客を獲得する場合の五分の一で済むと言われています。

〔2〕 お客様を差別する
 お客様ひとりひとりを、だいじにするという話をしましたが、お客様全員を同じようにだいじに扱わなければならないのでしょうか。日本では、お客様を差別する。たくさん買ってくださるお客様だけにサービスをするという考えに、なじみがありません。
しかし、毎月、5万円購入してくださるお客様と、2千円しか購入してくださらないお客様、しかも、バーゲンのときだけしか来ないお客様を同じように扱うことは、本当に平等なのでしょうか。

 「80対20の法則」というものがあります。20%のお客様が、80%の売上に貢献するというものです。100%のお客様に同じように、サービスしていたのでは、コストが膨らむだけです。サービスなどにかけるコスト、接客にかける時間を20%のお客様に集中してかけ、コスト効率を上げるということなのです。
 20%のお客様は、当たり前ですが、転居などで常に状況が変化していきます。また、得意客も購入するだけのお客様から、口コミで貢献してくださる「支持者」、アイデアを投げ、店や企業の運営に協力してくださる「パートナー」と、様々です。そのお店や企業の商品や社長が好きだから、店作り商品づくりに関わりたいと思ってくださるファンのようなお客様です。こうしたファンは自然に出てくるわけではなく、お客様をファンに育てる努力があって、はじめて出てくるのです。
 しかし、差別化は、少ししか購入しないお客様を粗末にするということではありません。ひとりひとりのお客様に向ける笑顔は、コストをかけずに実践できるはずです。ほんのちょっとしたきっかけで、「見込み客」が「顧客」になり、さらに「パートナー」に変わることを忘れないで下さい。

図表 お客様の進化

〔3〕 お客様をパートナーに育てる
個客商売には、たくさんのメリットがあります

(a)個客商売のメリット
■ 他社との差別化につながる
個客商売は、すぐに始めることができますが、すぐに成果が出るわけでもありません。
また、継続した努力が必要です。しかし、一旦できた個客との信頼関係は強く、他社がすぐに真似しようと思っても、出来るものではないのです。ここが、簡単なアイデアだけの商売と違うところです。
■ 売れるものが見えてくる
お客様ひとりひとりと親密にお付き合いしていると、お客様が何を欲しがっているかが、見えてきます。そうすると、製造業であれば、お客様が欲しい商品を造り、小売業であれば、ひとりひとりのお客様の欲しい商品を仕入れれば、売れ筋予測も正確になるというわけです。
■ 低価格競争に巻き込まれない
世の中、低価格化競争で、どの店も企業も息切れ状態です。こんなことが長く続くわけもありませんし、中小企業に勝ち目はないのです。個客商売は、低価格競争とまったく逆の状態です。手をかけ、コストをかけ、丁寧にお客様との関係をつくっていくのです。個客商売は、お客様に真剣に向かい合いさえすれば、どんな小さなお店でも負けることはないのです。いえ、むしろ中小企業は個客の顔が見えやすいという点では、大企業より有利な立場にあると言えます。

 それでは、個客商売の本題、パートナーを育てるポイントについてお話します。現在、大企業でもお客様を差別化しなければならないという方向で、顧客データベースを構築し、ポイントカードを導入しています。顧客データベースを使って、売上に応じた情報提供やプレゼントなどを行っています。
 しかし、中小企業は有利な立場にあるということを利用して、中小企業でしかできない顧客商売を実践してください。
(b)個客商売のポイント
■ 基本は顔を変えること
ITの時代になり、データベースやインターネットの利用が当たり前のように言われています。個客商売と言えば、顧客データベースの構築からと考えがちです。しかし、いくらITを導入しても、基本は顔を合わせることが一番なのです。カードを使えば、アルバイトの販売員にも、お客様の名前が分かるというメリットはありますが、できれば顔を見て名前を言えるのが一番なのだということを忘れないで下さい。
■ ひとりひとりに応じた商品、サービスの提供
お客様と店の距離が近いということは、その人がどういう人なのかということを掴みやすいのです。データベースに載らないお客様の特性を握っているわけです。ひとりひとりに合わせた仕入れやサービスの開発をしていけば、どんな大型店や外資がやって来ても負けることはありません。もちろん、そこには、お客様がどんな商品やどんなサービスを望んでいるかを掴む努力が必要です。会話や行動観察と合わせて、データベースやインターネットがそこに登場します。
■ お客様に合わせた接客
お客様によって、丁寧に応対して欲しい人と、あまり構って欲しくない人がいます。どのお客様にも同じ様に接客して喜ばれるはずはありません。そういう意味では、フランチャイズショップの接客マニュアルは、個客商売の対極にあるといえるでしょう。どちらのタイプなのかを掴んで接客することで、大手チェーン店に中小店が決して負けない道が開けてきます。
■ 意見、苦情を積極的に聞く
個客商売の第一歩は、お客様の意見や苦情を積極的に聞くことです。今の時代はITが普及して余計に、お客様が強い時代になっています。こうした状況の中で、意見や苦情を積極的に聞く店とそうでない店では大きな差が出てきます。苦情を言ってくるお客様は敵ではなく、大ファンになってくる可能性を持ったお客様です。苦情を言ってきて、放っておいたお客様は悪い口コミでお客様を追い払い、苦情に答えたお客様はよい口コミでお客様を連れてきます。

■ ITの利用
基本はお客様の顔を覚えることですが、お客様の細かい情報まで、すべてを従業員全員が頭で覚えておくことは不可能です。また、Aさんが知っていることを、Bさんが知らないということも起こるでしょう。そういう場合のために、顧客データベースを役に立ててください。ポイントカードを導入して、細かなサービスを行うことも可能です。
また、インターネットを通じて、お客様は実店舗のお客様よりも能弁に、自分自身のことを語り始めました。こうしたシステムをうまく使う店と使わない店では、大きな差が出てくるでしょう。どの店にも、必ず必要ということではありませんが、自店のサービスを検討して必要であれば、積極的に導入したほうがいいでしょう。システムは従業員2〜3人分程度の仕事をしてくれるからです。

〔4〕 データベースは難しくない
 データベースというと、たくさんの情報を手間ひまかけて集めて、高度なことをするというイメージがないでしょうか。たとえば、バーのホステスさんは紙の手帳で立派な顧客管理をこなしています。場合によっては、紙のカードでもいいのです。
 データベースの基本は、以下のとおりです。
@ 手間をかけない
A コストをかけない
B 長続きするようにする

 データベースは、できるだけ簡単に考えてください。そのほうが、逆に使えるのです。

(a)データの収集方法
■ 会員になって頂く
ポイント制度などを導入して、入会の際に会員カードに名前、住所、電話番号、生年月日などを、お客様自身に記入して貰います。その後、買い物に来られたときにカードを見せて頂いて、日時、購入した商品などを入力していきます。
■ 販売員に集めて貰う
ポイント制度を導入しない場合でも、お客様情報を集めることはできます。お客様の一番近い場所にいるのは、販売員です。販売員が売り場でお客様の行動を観察して感じたこと、気付いたことは、立派なお客様情報です。こうした情報をデータベースに溜め込むことで、見えてくる事実があるのです。
■ クレーム客から聞く
クレームを言ってくるお客様は、実はいいアイデアや提案を持っている人です。不満を感じているのに、提案がないか、あるいはあっても教えてくださる気がないお客様は、なにも言わずに去っていきます。それを考えると、クレームを言ってくるお客様のありがたみは分かるというものです。クレームのお客様から意見やアイデアを聞くコツは、まず、最初はお客様の言い分を真剣に聞くことです。そうして、クレームについての対処を話し、最後に、店の改善に活かしたいからと提案を聞き出すのです。
■ アンケートをとる
アンケートは、あくまでも店側の都合で行うものです。お客様は、個人情報を出すことを嫌がる場合も多いので、よほどのメリットがないと難しいでしょう。プレゼントなどの特典は必ず必要です。また、アンケートの取り方も以下の点に気をつけてください。
・質問項目をなるべく少なくする
・店頭で用紙に書き込んで貰う場合、書きやすい形式にする
・書く場所や筆記具を用意する
■ インターネットを使う
インターネットを使って間違いなく、情報が取れるのはネット販売を行った場合です。本人の名前、住所、メールアドレス、それに何をいつ買ったなどの購買販売は、間違いなく取れます。ネットショップを、商品を売り上げる目的だけに使うのでなく、お客様情報を取る目的に使うこともあるのです。
また、ネットの場合は、メールでの会話でこちらから話題を投げてあげると、個人情報を出して貰いやすいというメリットもあります。「仕事しているので、夜しか買い物ができません」というメールは、「専業主婦でなく、仕事を持っている」という情報を含んでいます。

(b)集めるデータの種類
 集める顧客データの種類には、大きく分けて二種類あります。
・ 基本情報
名前、住所、電話番号、年齢、家族情報、趣味、職業
・ 購買情報
購入した商品、購入した数量・金額、購入した時期
・ 行動情報
店頭で話したこと、店頭で取った行動、メールに書いてきた個人情報
 この基本情報と購買情報を組み合わせて、個別のお客様の状況を把握していきます。また、行動情報は細かく取っておくと、次の来店のときにかゆいところに手の届く接客につなげられます。しかし、個人情報や購買情報なとは必要最低限で押えておいてください。たくさんの情報をとっても結局使いこなせず、データは使っているうちに鮮度が落ちて役に立たなくなっているからです。

(c)データベースの種類
 データベースはパソコンだけでなく、紙のカルテなども入ります。またパソコンのデータベースにも、いくつかの種類があります。
・ カード・・・・・・紙の顧客カルテ、フォルダを利用する
・ 簡易データベース・・・・・・表計算ソフトや簡易データベースを用意する
・ 市販パッケージソフト・・・・・・「XX顧客管理」などの市販ソフト
・ 独自開発ソフト・・・・・・自社で開発する顧客管理システム
・ アウトソーシング・・・・・・業者に依頼して開発する顧客管理システム
・ ASP・・・・・・出来合いの顧客管理ソフトをインターネット上で使う。
 どのタイプを使うかは、企業の状況によって異なってきます。従業員がパソコンをどの程度使いこなせるか、顧客情報が多いか少ないかにもよります。


図表 達したデータベースの選び方

3,知恵を共有する

 
〔1〕なぜ、今、知恵が必要か?
 このところ、中国の急成長が話題になっています。中国は労働力が安いからと、低価格であることが、すべてのように語られます。しかし、中国の本当の強さは労働力が安価であることではないのです。中国の技術者が、10年前に本当の工場を見学したときには、工場の現場の活力に驚いたそうです。日本では、現場の職人が知恵を出し合って、様々な創意工夫をしていました。その結果、品質のいいものが効率的に生産できる、世界に誇れる工場が出現したのです。

 今や、その現場の活力は、日本の工場からは消え去り、中国の工場でよみがえっているのです。地方から出てきた女性行員が感心を持ってQC活動の勉強をし、取り組んでいます。
 本当の恐怖は、ここにあるのです。現場のひとりひとりが、創意工夫、改善をしている現場としていない現場。勝負は明白です。しかし、時代は、「大量に造って、大量に売る時代」から「お客様の欲しいものを造り、お客様の欲しいものだけを売る時代」に変わっています。10年前に戻って、効率化のためだけの現場改善では勝てないのです。今は、「お客様の欲しいものを造り、お客様の望むサービスをする」個客商売に、現場の創意工夫を生かさなければならない時代です。

 ファーストフードの店頭で、ひとりでハンバーガーを10個買いに来たお客様に、マニュアルどおりに「こちらでお召し上がりですか」と聞くという笑い話があります。そういう時代に、現場でこまめな対応ができる店には、大きな可能性があるのです。いえ、お客様の声を様々な形で吸い取り、生かせるような企業、店でなければ、生き残りは難しいでしょう。知恵の共有は、企業や店の生き残りを保証する最強の方法なのです。

〔2〕知恵って何?
 知恵と似た言葉に、「経験」、「勘」、「ひらめき」がありますが、どこが違うのでしょう。仕事をしている人はどんな仕事であれ、「経験」、「勘」、「ひらめき」を使って仕事がうまく運ぶように、工夫しているでしょう。しかし、「経験」、「勘」、「ひらめき」は、当たることもあれば、外れることもあります。しかし、商売を当たり外れでやっていくのは、あまりにも危険が大きすぎます。
 知恵のベースにも、「経験」、「勘」、「ひらめき」があるのですが、場当たり的な使い方ではなく、継続して使用することで安定的な効果を狙うのです。
 知恵には、経験から勘から得られたノウハウだけでなく、売上データのような単なる事実を示すデータ、売上ベスト10や商売別売上情報のようにデータを加工した情報、情報を基にして分析した報告書のような知識も含まれます。

図表 知恵の種類
データ 売上データなどの単なる事実
情報 売上ベスト10や商売別売上情報など、データを加工したもの
知識 情報を基にして分析した報告書など
ノウハウ 経験、勘、ひらめきから得られる成功のルール、原則

 知恵の管理、利用を実践する目的は、ひとえに現在の仕事、商売に付加価値をつけることです。たとえば、魚屋さんの仕事は魚を売ることですが、ただ魚を並べておくだけでなく、魚の料理方法を説明したり、側に刺身のツマ用にひとかけらのダイコンを置いておくことで、価値が出てくるのです。電気屋さんが冷蔵庫やテレビを売るだけでなく、電球が切れたときに、スピーディに取り替えに訪れることも付加価値です。こうした付加価値を探すために、知恵を保存、利用するのです。

〔3〕知恵を組織で共有するということ
 何がお客様に喜ばれる付加価値になるのか、経験や勘、ひらめきも大事です。けれど、ひとりひとりが思いつきで実践していたのでは、当たり外れや無駄も多くなってきます。その情報を共有して、当たる確率を高めることが「知恵を共有する」目的なのです。
 知恵を共有することが重要になってきますが、共有する範囲は広く、共有するデータや情報量は莫大なものになってきます。今までも、知恵の共有は思いついたときに教える程度だったのではないでしょうか。また、共有するデータや情報、知識、ノウハウも、全店の数年分の売上データ、販売員全員の工夫の成果、店頭で知り得たすべてのお客様のクレーム情報などを、紙に書いていたのでは、使いこなすことはできません。

 実は、知恵の共有は、IT技術が進歩して初めて、可能になったのです。LANやインターネットを利用して、離れた支店や営業所の情報を一箇所に集めることができます。また、簡単に扱えるデータベースが出来たことで、集めた膨大なデータや情報の分析ができるようになりました。
 全支店の商売別の売上を見たり、一年分のある店でのクレーム情報を拾い出したりが出来ます。一部の情報でなく、長期に渡る情報をいろいろな角度から見ることで、今まで気付かなかったことが見えてくるのです。

〔4〕知恵共有のポイント
 知恵を共有するということで闇雲にデータや情報を集めても、効果は出てきません。小さな店でもデータや情報は集めれば、キリがないですし、大量になればなるほど,鮮度を維持するのは困難です。また、たくさん集める程、使いこなせなくなってきます。そこで、何のために知恵を共有するのかを決めることが最初の仕事になります。また、知恵を集めるための仕掛も必要です。

(a)知恵共有の目的を決める
 取引先が数千件もあり、営業マンのいるような企業だと、最も、購入予定の近い企業を押え、効率的な営業活動をすることが目的になるでしょう。食品を製造している企業が、ネットを利用してお客様の好みを掴んで、ニーズに合う製品開発をすることが目的になる場合もあるでしょう。小売店が、お客様の声を集めて、店舗運営に役立てる場合もあるでしょう。
 その目的は、それぞれの企業が今後どういう企業になりたいかによって、決まってきます。

(b)出された知恵を評価する
 知恵を共有するには、すべての従業員やパート、アルバイトに協力して貰わなければなりません。これが、一番やっかいです。いい知恵や情報を出して貰うには、それなりの仕掛が必要になります。どういう評価をするのかを、全従業員に示し、評価の高かった知恵や情報を出した従業員には報酬を準備します。ノルマも多少は必要ですが、義務で出すよりも、評価されることで喜んで知恵を出して貰うようにするほうが、いい知恵が出ることは言うまでもありません。

(c)リーダ−を置く
 システムだけを作り、知恵を出してくださいとほっておくだけでは、まず、知恵は集まってきません。評価基準をつくり、知恵の提出を促進するためのリーダーが必要です。リーダーになれる人材は、受身的に仕事をする人ではなく、自発的にいつも仕事に工夫をして、その人自身がたくさんの知恵を持っている人です。知恵を出すと、どういう効果があるかを社内で言葉にして、語りかけることができる人です。また、状況によってやり方を変えていける柔軟性も必要です。企業によっては、社長自身がリーダーになることもあるでしょう。

(d)文章化の習慣
 日本人は、言葉でものごとを伝える習慣の強い国民です。それに比べ、欧米では仕事をするとなると、しっかりと文章を交わします。中国人もそういう傾向にあると言われています。日本が他の国に負けないようにするには、文章を書くことを身につけなければならないのです。知恵を保存・分析するには、知恵を文章にしなければ始まらないからです。知恵の共有は、仕事を文章化させることから始めなければなりません。文章の書き方の教育も場合によっては、必要になってくるでしょう。簡単なサンプル文章を示すことも、効果があるでしょう。

(e)社内風土
 知恵を共有するにはシステムや組織、仕掛も必要ですが、最も重要なことは、知恵を出しやすい社内風土です。若い従業員でも、いいアイデアを持っている場合があります。けれど、年功序列的な雰囲気だといい知恵も出しにくく、せっかくの人材や知恵が埋もれてしまうことになります。年齢に関係なく、自由にモノが言える雰囲気があって、はじめていい知恵は出てきます。実際に、知恵の共有が進んでいる企業は、社長と若い従業員が気軽に冗談が言い合える雰囲気があります。

〔5〕 知恵共有に必要なIT環境
 知恵を共有するために、大掛かりなシステムを用意する必要はありません。大規模な企業ですと、データウェアハウスという高性能なデータベースを導入する例もあります。けれど、大掛かりなものを導入しても、使いこなせない場合が多いのです。最初は、簡単な表計算プログラムでも、十分です。導入して、試行錯誤で使いこなしてから、必要なシステムにコストをかければいいのです。

(a) グループウェア
 グループウェアは、知恵の共有するための専用のソフトウェアです。メールや掲示板、電子会議室のほかに、従業員全員または管理職・経営者のスケジュールが一覧できるスケジュール帳、会議室などがあるような企業であれば、会議室の予約などもできます。

(b) データベース
 知恵を入力して、様々な切り口で分析します。販売員や営業マンが入力した大量の情報を各取引先ごと、各支店ごと、曜日ごとで選び出してみると、今まで見えなかったことが見えてきます。ひとりのお客様があちこちの店舗で買い物していて、購買した全部の商品を並べてみると、一軒の店では分からなかった買い物傾向が見えるでしょう。
 また、取引先が電話やメールで問い合わせしてきて、そのすべてが記録されているのを一覧で見ることができれば、お客様はいらいらする説明や質問を繰り返さなくていいでしょうし、企業の側にとっても接客の効率化とサービスアップが同時に図れるという具合です。

(c) LAN,イントラネット
 同じ店内、社内でサーバーパソコンにアクセスするのであれば、LANで各人のパソコンとサーバーをLANで繋ぎます。離れた営業所や店舗の場合は、イントラネットでつなぎます。イントラネットとは、インターネットで社内ネットワークを構築することです。パソコンが置けないような店舗であれば、携帯電話でメールを送信して情報をデータベースに送るようなこともできます。

(d)CTI
 CTIとはコンピュータと電話を統合したシステムです。電話がかかってくると、パソコンの画面に電話をかけてきたお客様の情報が表示されて、応答がスムーズになるという便利なシステムです。以前から、大手の通販会社、銀行、航空会社などで使われていた高額なシステムが安価になり、小さなお店でも手が届くようになりました。小さなお蕎麦屋さんで地図システムと組み合わせて、電話がかかってくると同時にお客様の家が地図上に出てくる、というような使い方をしているところもあります。

4,ITC(ITコーディネータ)って何?

〔1〕「失われた10年を埋める人材
 2002年にITC(ITコーディネータ)という資格が誕生しました。日本の90年代の「失われた10年」を埋めるためには、欧米の先進国に比べて遅れていたIT分野で追いつくことが急務と結論づけられたのです。そこで旧通産省の肝いりでITSSP(ソリューションスクウェアプロジェクト)というプロジェクトがスタートしました。
 日本は技術面では、決して諸外国に遅れていません。遅れているのはITの活用面、つまり、経営とITが結びついていないのです。知恵を共有するためのネットワークやデータベースは揃っているのに、それらの技術を使ってどうやって企業を強くしていくかということが出来ていないわけです。ITSSPは、この活用面の遅れを取り戻すことを目的としたプロジェクトであり、ITCは、その柱と位置付けられています。

 今までの情報化は、コンピュータメーカーやディーラーなど、ITベンダーと言われる企業の先導で進められてきました。けれど、ITベンダーのSE(システムエンジニア)は技術知識はあっても、経営については弱かったのです。また、SEが使うIT用語は呪文のようで、SEと経営者の間には会話らしい会話が成立していませんでした。そういう状況でしたから、企業の経営のあり方にマッチしたIT化は、ほとんど行われていなかったのです。
 こうした事情を改善し、ITを経営に取り入れながら、21世紀型企業に変えていける人材がITCというわけです。ITCは、経営者とIT技術を結ぶ橋のような存在と言えるでしょう。

〔2〕ITCの仕事
 企業にITを導入するには、いくつかのステップがあります。
@ 経営戦略の立案
企業の向かうべき方向、目標を設定します。
A 戦略に基づく情報化企画の立案
 経営戦略を実現するための情報化を企画します。
B 情報化を行うために必要な資源の調達
 目標とする情報化を実現するための情報機器、業者、その他必要なものを準備します。
C システム開発
 システムを開発、導入するための計画を立て、計画通りに開発が進むように管理します。 
D システムの運用と管理
 運用上、問題が起きないよう、現場のレベルに合った規則、ルールを作ります。ITはIT機器を導入するだけでなく、これだけのことを実施して、はじめて効果を上げるのです。今までは、情報システムは効率化の道具でしたが、これからは企業の将来を左右する重要なツールなのです。今までのような失敗は繰り返してはならないのです。
 このような仕事をするITCは、技術知識だけでなく、経営の知識、業務の知識、それに経営者や担当者、業者などと交渉するため、コミュニケーション能力を求められます。

〔3〕 ITCの賢い利用方法
 ITCは経営からシステム開発までと幅広い仕事をするため、高い能力を求められるわけですが、そのすべてをすべてのITCが備えているわけではありません。ITCには、試験を受けてITC補になり、そこから研修を受けて正式のITCになる人と、中小企業診断士、税理士、公認会計士、システム監査などの高度情報処理技術者の資格を持つ人が研修を受けてITCになる2つのパターンがあります。後者を見ると、情報系の高度情報処理技術者と経営系の中小企業診断士、税理士、公認会計士がいるということが分かります。

 幅広い知識と高い能力を求められているわけですが、実際にすべてのものをひとりで備えたスーバーマンのような人間は、ほとんどいないわけです。それでは、期待に添えないかというと、そういうわけではありません。ITCは研修で、ITCとしてやるべきことを、実習を通じて学習していきます。その中で、自分が得意なこと、そうでないことを知ります。そこで自分ひとりで出来ない部分は、その分野が得意なITCに任せていくのです。
 そういうわけで、ITCを選ぶ場合に、すべてをマスターしているITCを選ぼうとするのは懸命な選び方とは言えません。優れたITCとは、自分が得意なこと、そうでないことを明確に認識していて、得意でない分野で他のITCに頼めるよう、人脈が広い人です。また、経営者と技術者の橋渡しが役目ですから、コミュニケーションがきちんと取れる人材かということも、大きな目安です。

 ITCは、現在、中小企業事業団のIT推進アドバイザーに登録されています。また、ITC協会のホームページにも、現在のITC認定者のプロフィールが地方別に紹介されています(http://www.itc.or.jp/)。ITCに依頼すると、IT化のための各種補助金も利用できます。積極的にITCを利用して一歩も二歩も進んだIT化を進め、いち早く勝ち組みを目指してください。

5,IT活用に利用できる制度

 情報化について相談したいときは当事務所にご相談ください。ITCは現在まだ少ないひとですが、当事務所でもこれの取得に取り組んでいます。ただいま研修中ではありますがご相談には応じます。私で不十分なところは東京はじめ全国の仲間がお手伝いできます。また、下記の機関もご相談にお答えしています。


〔1〕 IT推進110番(相談無料)TEL088−845−7700
「事務処理をパソコンで」「データベースを作りたい」から「社内で情報を共有化したい」など、パソコンを使い始めると、知りたいことは盛りだくさん。
でも、「何をどうすればいいの?」「誰に聞けばいいの?」・・・迷ってしまいがちです。
迷ったらまずIT110番へ。お気軽にご利用ください。
● 電話による相談
● メールによる相談
● 面接による相談(お電話でのご予約が必要となります。)
<担当>
・情報システム全般、LAN等ネットワーク担当
・インターネット・ホームページ担当

〔2〕 情報化アドバイザー
 専門家が直接現場にお伺いし、各企業ごとに適切なアドバイスを行います。

<相談例>
■ 自社にあったパッケージソフトの選択について相談したい
■ データベースの作り方について相談したい
■ 社内LANを構築したいが、業者に頼む前にレイアウトを相談したい
■ インターネットのセキュリティー対策について相談したい
■ 社内で情報を共有したいがそんな方法があるか相談したい・・・等

情報機器を購入したい
設備貸与(割賦・リース)
 小規模事業者等の創業及び経営基盤の強化のために導入されようとする設備等を貸与(割賦・リース)する制度
★ 貸付限度額
創業1年未満の企業等   50万円〜3000万円
創業1年以上の企業等  100万円〜6000万円
★ 割賦損料率  年2.75%
★ リース料
別に定める率(税金・保険料込み)
★ 従業員規模等の対象要件がありますので詳細はお問い合わせください。
問い合わせ先
     財団法人高知県産業振興センター 金融課
     TEL088−845−6600

人材を育成したい
〔1〕 情報関連人材育成事業派遣奨励金
高知ソフトウェアセンターが主催する情報処理に関する職業訓練を、事業主がその雇用する被保険者に受講させた場合、当該職業訓練に要する受講料の一部を支給する。
対象訓練コースにつきましたは、高知ソフトウェアセンター企画教育課までお問い合わせください。
 問い合わせ先
    KSC(株)高知ソフトウェアセンター 企画教育課
    TEL 088−850−9111
    e-mail ksc@k-sc.co.jp

〔2〕 各研修機関のご案内
● 雇用・能力開発機構 高知センター
高知市本町4−1−8 フコク生命ビル3F  TEL088−872−2112
特定非営利活動法人ITCこうち
高知市本町四丁目1番16号高知電気ビル6階  TEL088−884−0061
● ポリテクセンター高知
高知市桟橋通4−15−68  TEL088−833−1009
● 高知県職業能力開発協会
高知市布師田3992−4  TEL088−846−2300
● ポリテクカレッジ高知
香美郡野市町西野1595−1  TEL0887−56−4111
● 中小企業大学校  広島校
広島市西区草津新町1−21−5  TEL082−278−5800

〔3〕こうち中小企業ひとづくりガイド
 各機関が実施する研修等の年間スケジュールについてのガイドブック
問い合わせ先
   高知県商工労働部 経営流通課 団体指導班
   TEL 088−823−9698

お知らせ!

当事務所ではITに関しての講演会の講師を承っています。EC実践講師として日本商工会議所の基礎コースの認定をいただいています。

ネット社会が本格化しています。高知の企業が存続し発展していくためには人材育成は急務ですので、これに対して積極的に取りくみましょう。四国内の各地商工会議所のEC実践講師を希望により行います。

 
 

〒780-0833 高知県高知市南はりまや町1丁目10番7号
公認会計士・税理士・行政書士・ITコーディネータ・公認システム監査人 氏原事務所

TEL 088-884-0033
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更新情報 2006年2月13日