いきづまったこよみの
夏らしくふるまったその日を
破り捨ててしまいたいと
狂気のごとく思い立つ日


きのうの風と今日の風の違いを
きみがその声で区切る音がした
ぷつんと


幕を下ろすようにひぐらしが
鳴いて鳴いて泣きやまず
行き場を見失った影のように
その夕暮れのただ中に独り立ち竦む


そうじゃないと言って
正されてこそわたしは生きる
たとえ許さぬと風が
矢を放ち瀬戸際のところへ
追い遣られたとしても
そうじゃないと言って


暮れていく熱き声が愛しく
不確かな息の行方が哀しく
盲目の姿で風の声を探し続ける


そうじゃないと言って
そうじゃないと言って





立秋
2004/08/31
詩織の部屋へ