そうじゃない こんなんじゃない
もっと身をひきちぎられるような
痛くどうしようもないところへ
ぼくは行きたかったんだ
そうして我が身を映す水鏡
ぼくはきっと不幸が好きで
どうしようもなく縋りついて
その水に溺れてみたかったんだ
涙を真珠だと弄んでみたり
溜息と同じくらいの風で
いともたやすく倒れて
泣いて苦しんでみたかった
ただそれだけのために
ひとを傷つけたこともあった
とべない鳥をあわれんでばかり
傷ついた羽根をほらとひろげて
得意がっていたのかもしれない
不確かで心細くなるような記憶だけど
それがとても
美しいものだと思っていたから
ながいこと生きていると
そんな姿にはっとする時が来るんだね
そうじゃない こんなんじゃない
ぼくの羽根は傷ついてなどいない
どんなに情けなく生きていたって
どんなに過ちを繰り返していたって
ぼくはこんなにも空に愛されている