このままじゃぼく浮かばれないよ
あの子が闇の中から声を嗄らして
叫んでいた いまは春遠い記憶の空

はらはらと桜散る陽だまりで
あの子の声を聞いていた
こんなにもまっすぐにそこにいる
たしかな感触 きらきらと光る瞳

受け止める抱きしめる頬をよせる

母さんもういいよぼくこれが欲しかった
あの子の髪に口元に手のひらに
ほらね無くしたらいけない
潰したらいけないそっとして

あの子が花びらになる
青く澄んだ空のかなた
そっとあわせた手のひらを
風がくぐり抜けていく

あの子は桜色の空になった
儚くせつなくどうしようもなく

遠くに流れていくのだと言う

いまは春 桜色の空の下

いまは春 やっとあの子に逢えた春






水子地蔵
2003/04/05
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