人の表情に
なにかを汲み取るようになったのはいつから
水の気配がした
井戸のずっと深い部分から汲み出したとびきり冷えた
水の気配があなたの体に感じられた
あなたには
水が流れていた ずっとずっと何億年も前から
わたしにも
水が零れてきた
其れはたちまちのうちに
穏やかな波間の朝を氾濫させ
あなたが去ったあと
わたしがこわれてゆく
火のようなあなたの強さを
気丈な演技であると悟った朝
あなたの気配が
わたしの円周を逸れて消えると
内心はほっとしている
感じる
戦いに赴く人のように
いたたまれない子どもの
腐乱した追憶の悲哀
わたしは
感じる
なすすべもなく佇む
裸身の己が心を