ことばにきずつく
きずつくと
きずつけたことは
すっかり忘れていた
悲しみは
じぶんばかりを
被害者にして
わたしじしん
加害者だったこともある

こどもの何気ない
ひとことに
きずつく
たとえば
ばばあとか
うるさいとか
ひととして
口にしないことば
それを
わたしもかつて
母に言ったのでは無かったか
白髪ではなく
まだ黒髪ゆたかな母に
そのときの母の悲しい顔を
わたしは覚えている
人のことばを
こどもがおぼえてゆく
それは
美しいことばよりも
思春期の棘が
しんらつさを研ぎ澄ますけど
ながれてゆく水のように
わたしをすりぬけて
いつか別の
愛する誰かに向かうのだ
それまで
わたしはせきとめて
せきとめて
人のことばの本当を
あのこが知るまで
ここにいなくてはいけないのか





人の言葉
natuko
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