ちっちゃな天使が訪れた
ちっちゃなちっちゃな小生意気な天使が
ねえねえこれ知ってる?
バトンだろバトントワリング
知ってるんだ
知ってるよ
( ・・なんだ天使じゃなかった )
ねえねねバトンを振ったらねェ
振ったら何だい
私を好きになるよ
ハハハ
( ・・しばらく付き合わされそうだ )
ねえねえこれなにさァ?
ノートだよ
そんなのわかってるよ 見ていい?
だめだよ
ここ引き出しだあ何が入ってるんだよ?
開けちゃダメだよ
だめ開ける あ、ちっちゃなほうきだ
箒だよ
そうじしてあげる
いいよしなくて
ここそうじしているのォ?
してるよ
じゃァなんでこんなにゴミがあるのさ
出るんだよ
ちょっとそこどいて
・・・
( 細いからだを丸めて床を掃いている ぼくは見つめた )
ほらきれいになったでしょ
あんがと
あ、これお金が入ってるぅ
そうだよ
もーらった!
だめだったら
かくしちゃおォ〜
だめだったら
( ・・どうも付き合っていられないが、怒れない )
お給料もらってる?
100万貰ってるよ
嘘言ってるぅ〜!
いま忙しいんだよ
何もしてないじゃんか
これからするんだよ
じゃあァ すればいいでしょ
ほら、帰りなさい
( とは言ったが 言葉が笑っている )
これなんだァ
なにが?
ほっぺた ほらさわってごらん
あ、勝手に飴食べたな
ふふふそう、ここにあったよ
こらァ〜
( ・・かわいいなあ 抱きしめちゃおうか・・ )
目をつむって手ぇ開けて
忙しいから帰んな
いま帰るところなのォ いいから目ェ瞑って! あげるよ
・・・なんだ これおれの飴だろォ
ふふっ そうだよ じゃあ帰るね
バトン振らないのか?
さっき入る前に振ったもん
来た時か?
そうだよ、バイバイ
・・・
( そうか、バトンは振られていたのか・・ )
すごく納得している自分があった
( やっぱり天使かなァ )
ちいさなバトン
夜鏡
イラスト