想い

固く踏みしめられた土の中で
あなたは眠っている
誰にも気付かれないように
息を殺して眠っている

散らなければいけなかった季節
あなたは一粒の種になった
埋めて踏んで忘れて・・・
そう言って泣きじゃくりながら

私は空に祈り続けていた
どうか恵みの雨をどうか暖かい陽射しを
たまらない不安と葛藤の嵐のなかで
か細く頼りなくあなたは泣き続ける
私は地面に縋りついて泣きじゃくる

助けてよ苦しいよもう戻れないよ

空はずっと見ている
ほんとうのことを知っている
あなたが眠りから覚めるとき
柔らかな緑の小さな芽が
太陽に逢える瞬間を
信じて疑わず待っている

愛しさが雨になるなら
私は恵みの雨になりたい

くすり

痛いね

ちくちく

痛いね

ずきずき

なにも傷なんて

ないない

熱くて優しい

くすりが欲しい

陽だまり

あいたいね

陽だまりであなたと猫とわたし

あいたいね

お陽さまの匂いをいっぱいあびて

ため息やさみしさや涙や

光の中に投げ捨てて

そっと抱き合おう

陽だまりあなたと猫とわたし

とぼう

このひんやりとしたあさを

ありがたいとおもい

きたかぜにはねをひろげて

とぼうとぼうそらのはてまで

みらいきぼうゆめ

あきらめないでずっと

つかれたらたいようにだかれ

なきたいだけなけばいい

なきたいだけなけばいい

コーンポタージュ

とろとろとろり

私はとける

生クリームとミルクと

熱くても我慢する

ぐるぐるとまわりながら

あなたの指先を

見つめているのが好き

カップの底で夢を見る

あなたの口のなかで

あなたの舌のうえで

愛されてみたい

私は小粒の寂しがりや

朝の光をからだ中で受け止めて

すくっと背筋を伸ばしてみる

両手を拡げて光の粒子を包み込む

ひとつだけもらってもいいのかしら?

胸にかざすキラキラのペンダント

半分こしてあなたに贈りたい光

ずっと一緒に光っていようね・・・

ずっと胸に抱いていようね・・・

祈り

ひゅるひゅると風の声を聞きながら

目を閉じて想う願う祈る

だいじょうぶだよと神様がささやく

片方の手でもう片方の手を握り締める

脈打っている流れている私の血

遠い未来までずっと流れていけ・・・

夢叶うまでずっと流れていけ・・・

合鍵

なくしていたもうひとつの鍵が

やっと見つかったので・・

ここに置いておきますね・・

気が向いたら開けてみてください

ドアの陰に隠れている私が・・

あなたにだけは見えるはず・・

鍵は私が持っています・・

だから誰にも開けられない

壊さないで下さいね・・

ひとつしかないドアだから・・

行方不明

書けない朝の書けないこころ

私は何処へ行ったんだろう?

ここではない遠いところ

風に吹かれて流された・・・

つかの間の安堵と安らぎと

癒されたい想いと・・・

しばらく帰って来られないかも

しれない・・・・・・

どうか私を探さないで下さい・・・


安堵

もう迷わなくてもいいと風が言い

私は雲に抱かれる夢を見る

夢なのに優しく熱くて激しい

一晩中雲がささやく

一緒に流れて行こう・・・

一緒に消えて行こう・・・

もう何も思い残すことはない





2001年12月の詩

詩織の部屋へ