雪国のこと
島田 奈都子
ひえびえとした白
頬擦りする子の温もり
ほのかに林檎の色
ふたりきりの雪国
時折氷を踏む音が
響くいつからか
戸をあけ首をのばし
貴方かと探さなく
なった
ただしんしんと
降り積もる後悔
子を抱くと
子は私を見上げる
雪のようにあおじろい
病の素肌
くすりの時間が来る
吐く息は部屋でも白い
からだの深みに
ようしゃなく降る
暗い空洞を満たす
なにか
私は終わりを予感していた
だから埋もれるままに
雪の部屋に眠りたくなったのだ
子を寝かしつけながら
死とか生とか
理屈は忘れて
しんしんと雪は降る
ふたりきりの雪国
雪明かりをもとめて
いきる希望がさ迷う