寒い地方では
既に夏休みが終わったという
盆の頃には
彼と枕を並べた天井の升目が
もと居た家の天井に似ていて
私は溢れる涙をおさえられなかった
もう祖母の家も
私が離婚して借りた小さな家も
なにひとつ残らない

記憶は水中花のように
とおい時の水底に漂う

おもいださなければ
今に固まり 化石となるだろう

天井の升目が悲しい

ふとセミではなく
秋の虫がないた
それは幻聴であり
壊れそうな冷蔵庫が
鳴いただけ







夏の終わりに
島田 奈都子