たわいなく咲いている梅の
静けさ
何も言わないから
示される存在のまどろこしさ

梅は着飾らずあるがままに

冬を忘れられず
いくらか雪の名残をまとい
白くゆれている

私は歩くたびに
旧友に遭遇したあの
素朴な驚きに似た
やさしい夢を見る
桜にはなれない!
梅は梅であり
それでいいのだと
若い頃は思えなかった

ひっそりと光を吸い込み
風に歌う
小さな梅の命が
ひとりになった私の記憶に
いつしか何気なく
寄り添うようになった







島田 奈都子