脱ぎきれない過去を
また着込んだまま
ねむりにつく
羽ばたくことの
不可能な さなぎ
永遠に
さよなら
とはそういう気持ちになる
二度と
もう
二度と
まっすぐに人を愛せないのでは
というように
抱き寄せる
猫
おまえもいつかは
消えてゆくけれど
さよなら
と話せない
ひとつも人の言葉をいえないおまえが
今は安らぎだ
猫は
鼻と鼻でお辞儀をするから
わたしは
今夜はさよなら
を忘れ
飼い猫に改めて
こんにちわ
とつぶやく
これからは
おまえだけが友達だよ
さよなら
島田 奈都子