とりは ひとりで飛んでいた
足の悪いひとが
ゆっくり立ち止まっていた瞳の先には
世界でいちばん早足のように
歩いてゆく 日本人たち
歩けないほど
疲れている昼間
わたしには
なぜだか
今まで見えないものが
ありありと見えた
子供の目線とは異なる
遅れてゆくひとびとの中に
小さなころから混じっていたのだ
たぶん
からだもこころもひとつながりに
どこか
ためらいながら
やっとのことで
自分の歩幅であるいてきたのだ
そう思うと
ふいに怖くなり
立ちすくんだ
本姓に戻った
ある日のこと
見えないものが
島田 奈都子