つらいとき
地蔵に話したことを
おもいだす
それくらい
追い詰められた日々も
ながいかげぼうしのどこかに
消えてしまった
だけど
魚くさいこの町の何処かで
あるとき
地蔵を見かけて
赤いおべべを着た
その地蔵は
雪国のより
太って血色も良く見えたけれど
ぽつんと
そこにいてくれる
地蔵は地蔵
どんな町の片隅にも
疲れたひとのこころを
しずかに知りながら
知らん振りして
たっている
懐かしい誰かに似ている
地蔵
地蔵
島田 奈都子