それはおだやかな春の海のようだった
波はまだきっと深く眠っているのだろう
風もまたそのありかを知らせずにいては
ただただ朝の光に映しだされているばかり
雲にのりたいといったあのひとのねがいは
失われたわけでもなく消えたわけではない
みえなくてもいいことがきっとそこにある
生きづらい世の中だけれど大切なことが
ほんのすこしわかってきたような気がする
あのひとはそう言って空を仰いでいるだろう
雲ひとつないもうなにもさがさなくていい
雲ひとつないもうなにももとめなくていい