鈍い頭痛が
曇り空をひきのばしている
手の届くところに横たわる子猫が
媚びた姿勢でこちらを見ている
しかし 本当に触れると
消えてしまいそうな曲線が
ぼんやりと黒い影を作っている
灰色が水色に水色が紫色に
そしてオレンジの灯に
変化していく空
泣いてしまいたい夕暮れ
この 焦りが何なのか
随分と長い年月
考えてきたように思う
私は艶やかな毛並みにそっと
触れてみた
猫は不意に私の前をすり抜けて
夜に馴染んでいく
黒い猫に
リアルな安堵をする
もうひとりのわたし
春のまえ
yuki