2008/10
きもちよくわたしはいく
朝の窓辺から見上げた空は雲ひとつなくて
くうきが空の息のように流れているのだった
このままどうしようもなくとけてしまいたい
そうくうきのように
それを風だと感じられるように
山里の職場へと向かうその道沿いに
今年も紅い鶏頭の花がたくさん咲いた
炎のように
空気がいちだんと澄んでいるせいだろう
勢いよく
それはほんとうに燃えているように見える
はっと息をのむ
そうしてとくとくと流れる我が身の血を
痛いほどに感じた
ふあんがるなおそれるな
呪文のようにそんな声が聴こえる
今はただ空に向かい精一杯に咲けばよいと
それがおしえてくれる
山道を行けば萩の花びらが散り敷かれて
まるで踏み絵であるかのように問い詰める
この震えこの心細さを受け止めてしまえば
不確かな道の標にだって成り得るのだろう
そうして桜紅葉は花と似て散り急ぎ
もう冬支度のようでもあった
きもちよく きもちよくわたしはいく
わたしの灰汁などほんの些細なことであろう
けれどもやがて巡りくる春に捧げてみようか