わたしはまだ土のなか

もうずいぶんと生きてきたけれど

まだずっと土のなかにいる


さけびはしない

呼ぶこともしない


だけど足音がきこえるたびに

まだ見ぬ空をおもってないた


この実がこのまま朽ちること

この実がやがて土そのものに


不安とか心細さとか嘆きとか

そんなことどうだっていいと


おもう


土のなかにいまがあるから

めざめればまたいまがくる


わたしの芽はずいぶんと固い

けれどもわたしは実であることを


ほこりにおもう


いまここにひとつぶが生きている









ひとつぶ
2007/01/06
詩織の部屋へ