遥 か な る 頂 へ


『頂上へのルートを発見しました!
 後はアタックするだけです!!』


アタックとは、山頂までのルートを確保し、最終キャンプから山頂目指して出発する事であり、
私が今まで一度も実行した事のないコマンドです。
穴蔵登山隊の四年目、こんな嬉しい報告を知らせてくれたのはDK隊員だった。
その直後、風速七十米を越える山頂付近の突風と相次ぐ隊員達の体調不良!!
断腸の想いとはどういうものか解ったような気がした。
今年も失敗、撤退だ!!

そして迎えた五年目、今年こそは成功しそうだ。 山頂までのルートは見つかっている。 隊員達の経験もかなり上がっている。 残念なのが、おっさん隊員が引退してしまった事だ。 だが、能力・年齢共にダントツのイワ王隊員はチャッカリ残ってくれた。 彼の引退は是非とも笑顔で送り出してあげたいものだ。

早速、登山計画を立てる。 目指すはマヌーツェ峰山頂、南西斜面より向かって左側の稜線を進むルートだ!!
稜線を進むルートは、雪崩や落石の被害が少ない反面、突風に曝されて滑落しやすいというデメリットがある。 ・・・らしいのだが、何故か落石が多いと感じるのは思い過ごしだろうか。 いや、それよりも過去二回の挑戦で一番やっかいだったのが
食料不足
だった。 山頂付近、強い風が止むのをじっとテント内で待ち、いざ風が止んだら体調不良を訴えてきたり、ベースキャンプを離れて一週間です、ベースキャンプに帰りたいです、などと軟弱な事を言う隊員達。
そんなこんなであっという間に底をつく食料。 今年は絶対に登頂を果たす為、食料は1.5ヶ月分用意した。 そして、雪崩の危険度がUPする七月を避ける為、五月に行う事にした。

過去の経験から得られた知識、
最初の十日間が勝負!!
山頂付近はどうしても作業が難航するので、最初の十日間にどれだけ高くにテントを張り、どれだけ多くの隊員達が高所へ身体が適応するのかが勝負の分かれ目である。

いよいよ登山開始である。
初日、いつもの場所に最初のキャンプを設置。 他の部隊に物資を移送させていく。 例年にない程スムーズだ。
今年の登山はちょっと違う!!
そろそろ初日も終わろうかという頃、第三部隊との連絡が途絶えた。
今年の登山はちょっと違う!!
翌日、DEVUN隊長の第一部隊が彼らを発見。 全員無事だ。
一週間を待たずに第三テント設営。 この先が大変だ。

今まで失敗してきた分、ただの登頂だけではつまらない。 私には、ある野望があった。
それは・・・
全隊員登頂成功!!
そうでもしなければ、志半ばで散っていった英霊達が報われない。 みんながんばってくれ!!

その翌日・・・
またもや第三部隊遭難!!
かなりの高所での事だ。 それを待っていたかのようにバタバタ倒れる隊員達。
翌日に発見したものの、体調がかなりヤバイ隊員が数名いる。 ベースキャンプまで持つのだろうか? 特に幽太隊員、今にも逝ってしまいそうだ。

あと少しだ・・・

あと少し・・・

・・・・・・

何とか全員ベースキャンプまで帰ってこれたのだが、
幽太・ogi両隊員病院行き決定!!

・・・私の野望が早くも潰えてしまった・・・

・・・気を取り直していこう。 いつもの事じゃないか!!


それからは遭難者もなく、登山開始から20日が過ぎた頃、遂に山頂まで手が届くところまでやってきた。 多くの隊員達も高所に順応している。 はたして、初登頂するのはどの部隊だろうか?

関東部隊を最終キャンプに移動させた。 いよいよ明日、アタックだ!!
ん? 隊長から無線が・・・ 隊員が体調を崩したのか。 残念だが引き返しなさい。
次に九州部隊を最終キャンプに移動。 いよいよ明日、アタックだ!!
ん? 隊長から無線が・・・ 隊員が高度障害になったのでこれ以上は進めません、か。 残念だが引き返しなさい。
次に第三部隊を最終キャンプに向かわせる。 キャンプ到達前に隊長から無線が・・・ 隊員が体調を崩したのか。 残念だが・・・
次に復帰した関東部隊を最終キャンプ入りさせる。 いよいよ明日・・・
ん? 隊長から無線が・・・ 隊員が体調を・・・ そうかそうか・・・

キミ達、登頂したくないんか?

その二日後、最終キャンプで朝を迎えた隊がいた。 DK隊員を隊長とする第一部隊だ。
とても天候が良い。 まさにアタック日和だ。 遂にこの瞬間が訪れた。
六月一日、第一部隊アタック開始!!
勇んで出発する第一部隊。 途中で高度障害になったが、今更引き返させるモノか!!


六月一日 八時三十五分
マヌーツェ峰初登頂成功!!
登頂成功者
DK隊員・ゆき隊員・にゃお隊員・あゆみ隊員・RYU隊員

天候は快晴、周囲が見渡せる最高の登頂となった。
今までの 犠牲 苦労が報われた瞬間だ!!
まだまだいくでぇ。 食料はまだまだあるからな。


六月三日、第二次アタック開始!!
同 十五時十五分
マヌーツェ峰登頂成功!!
登頂成功者
DEVUN隊員・イワ王隊員・ウルフ隊員・凪隊員・よっぱ隊員


六月五日、第三次アタック開始!!
同 十三時四十三分
マヌーツェ峰登頂成功!!
登頂成功者
栃心隊員・化けねこ隊員・ルナ隊員・おっさん隊員・あ〜る隊員


全員登頂成功(約二名除く)!!


後は全員無事に帰還するだけだ。 ここで遭難者を出しては目も当てられない。
順にテントを撤去しながら下山していく隊員達。
全てのテントを撤去し、全員がベースキャンプに戻ってきた。 そして、我らが穴蔵登山隊は日本に凱旋した。 翌日の新聞には大きく載っていた。
初登頂7128メートルマヌーツェ と。
この感動は是非みなさまも自身で体験して頂きたい。 とても言葉では表現出来ません。


そして、穴蔵登山隊隊長である くまゼット を待っていたのは、IMAS(国際登山連合)からの表彰だった。 マヌーツェ登頂をゴミも出さずに成功させたのはとてもすばらしい、これをあげます。 そういって頂いたのが隊長の称号だった。 説明書によれば、Eagle や Falcon 等の称号があった。 私が頂けたのは・・・ Mosquito だった。
こんなにがんばったのに
私は 蚊 ですか?




次に我々穴蔵登山隊を待っているのは、標高7636米のダウラチェンリだ!!
がんばりましょう、みなさま。