幽体離脱


その時、私は空を飛んでいました。 いや、飛んでいたと言うよりも
浮いていたのです。
青空の中、周囲には白い雲が流れていました。 眼下には広い
森林が見えます。
『ここは何処だろう・・・』
そんな事を考えていたのですが、そんな疑問すら全く気にならない
ほどに 気持ちよい浮遊感なのです。
しばらくはそんな曖昧な意識のままで浮かんでいました。
そして再び、先ほどと同じ疑問が脳裏をかすめました。
『ここは何処だろう・・・』
広い森林。 どこまでも濃緑に埋め尽くされた大地。 ここは日本
なのか?
ゆっくりと思考を巡らしていきます。
こんな体験を聞いた事があるぞ・・・ 何だったっけ・・・
そうだ! 魂が身体から抜け出て宙を浮かぶ体験だったなぁ。
確か、幽体離脱 とか言ったっけ・・・
私はその時点になって、初めて自分の置かれた状況に恐怖を
感じました。
このまま自分の身体に戻れなかったらヤバイのではないだろうか。
戻れないという事は すなわち
Go To Heaven!!
やばい!! やばすぎですよ、今の私は!!!
もがきました。 しかし、私は雲のように前方に流されていきます!!
身体に還らなくては・・・ でも、何処に? ここは何処?
もはやパニック状態です。
ガクン!!
突然、ニュートンが発見した法則が私を支配しました!!
私は濃緑の大地めがけて落下しだしたのです!!
あぁぁぁぁぁぁ・・・ 落ちるぅぅぅぅぅぅ・・・
(ドップラー効果)

ガシャーン!!!

派手な音を立てて私の筆箱が机から床に落ちました。
ここは・・・ あの世か?
そんな朦朧とした意識の中、私の視界に入ってきたものは
鬼!? ここは地獄か!?
いや、鬼のような顔をした地理の
N教師の顔!!



よく眠れたか?

鬼のような顔をした N教師はそう言うと、分厚い教科書を片手に
近づいてきました・・・


  教訓
昔からよく聞く、幽体離脱体験。 一体どんな気持ちなのでしょう。
体験したくは ないけれど・・・ それと、良い子は学校の授業中に
居眠りなんかしちゃダメだぞ。




解りました!