ゾンビ 後編


いよいよ私達の出番が来たようです。 男が後ろから私達にホールへ
入るよう 促します。 有無を言わせず群集の前に並べられた私達。
群集から嬌声が発せられます。 先程の女性が口を開きました。
『今夜は若い男性がこんなに集まってくれました。 彼らが皆様の お相手をします。 さぁ、好きな方を選んで下さい』
人身売買か? 私は思いました。 しかし、もっと恐ろしい現実が目の
前で起こりました。 女性に声をかけられた群集がワラワラと私達に
接近してきます。
両手を前方で漂わせながら・・・ 私達を掴まえるために・・・
この光景、どこかで・・・ そうだ! あの映画だ!!
接近してくる妖しげな群衆、それは生者の身体を食らうために徘徊する
生きた死体・・・ そう、ゾンビ にソックリなのです!!
中には走ってくる人もいます。 恐怖のあまり、私達は後退りました。
が、背後では女性の踊っていたステージが私達を阻みます。
私達は掴まってしまいました・・・

おばちゃん達に!!


『何だか息子と踊っているみたいだわ』
ジルバってこんな感じなのでしょうか? おばちゃん達が激しく踊って
います。 私の目の前で!!
私はおばちゃんの手を取っているだけです。 それでもおばちゃん達は
激しく ヒート アップ していきます。
『あぅぅ、孫みたいやぁ・・・』
ハッとして声が聞こえた方を向きました。
そこには、今にも お迎えが来そうなおばあちゃんが他のおばちゃんに支えられながら立っています。 そして、フラフラと歩いてきたおばあちゃんはガバッと私に抱きつきました。
満面の笑みを浮かべながら。
『何なの、これわ・・・』
私は気が遠くなるのを感じました。 本当にその後の事はよく憶えて
いないのです。 本当に・・・

そうして、『高地漁業組合婦人会(仮名)』 のパーティーは 無事 終了
しました。 朦朧とする意識の中、私達はバイト料をもらいました。
もらったハズです。 その時の事は よく憶えていません・・・


私達は下宿へと返ってから酒を飲みました。 その夜の酒は非常に
マズイ酒 だった事だけは鮮明に憶えています。


  教訓
ウマイ話には裏がある。 この例えは本当なのです。 慎重な行動を
心がけましょう。 それと、お年寄りを大切に・・・



解りました!