ET


学生の頃の話です。
私が河野(仮名)の部屋へ遊びに行く途中での出来事です。
彼の借りているアパートは周りが田んぼという事もあり、夜はかなり
暗くなります。
その日は月も出ていない暗い夜でした。
ここってこんなに暗かったっけ?
彼のアパートの明かりが見えてきました。 私は、当時の愛車 『サンダー
セプター (チャリ)』 のスピードを上げました。 その時、突然湧き起こる
言い知れぬ不安・・・ 何か、何かを忘れている・・・
それを思い出す前に変化が訪れました!!
ガクン
激しく揺れるサンダーセプター!! 崩れる平行感覚!!
全てを思いだしました。 彼のアパートへと通じる細い通路が 冗談の
ような シケインになっていた事、そこにはガードレールはおろか反射板
すら存在しない事を!!

かつて、宇宙人と少年の交流を描いて世界的に大ヒットした映画があり
ました。 自転車が夜空を飛ぶシーンが有名なあの映画です。

今の私はエリオット?
しかし、自転車の前カゴに入っているのは ET ではなく、酒とツマミです。
あぁ、これが現実か・・・
落ちていく私・・・

未だに不思議なのですが、こういう時の私ってわずかな時間の間に実に
くだらない事を色々考えてしまいます。 みんな同じなのだろうか?
もしかして、これが走馬燈ってヤツなのか?


『聞けぇぇぇぇぇぇぇ』
河野の部屋へ入った私の第一声です。
私の話を黙って聞いていた河野が言いました。
『あぁ、あそこはよく人が落ちるんや』
『何か置いとけやぁぁぁぁぁぁ』
『でも、今が冬で良かったやん』
『!』

私が見事な着地をしたトコロは、稲刈りも済んだ乾いた田んぼだったの
です。

六・七月に落ちた人達に合掌!!


  教訓
暗い夜道には気をつけましょう。 何が起こるのか分かりません。
それと、何度も言いますが 八つ当たりはいけません。 注意しましょう。



解りました!