墓 場


近所のお寺へと虫取りに行きました。 狙いは あのやかましい
アブラゼミです。
一人で墓場の中へと入っていきました。 その奥にはセミの沢山
いる老木があったからです。

セミ達は何も知らずに鳴いています。 身を屈め、ジリジリと間合いを
詰めていき、あと少しで射程距離内というトコロで一匹の大きなセミが
飛び立ちました。
反射的にタモ網(虫とり網)を一閃! 見事ターゲットを捕らえる事に
成功しました。
自由を失ったセミはタモ網の中で激しく鳴いています。

・・・?
気が付きました。 鳴き声がおかしい事に。
セミならば ジ・ジ・ジ・ジ・・・ である筈です。
ブ・ブ・ブ・ブ・・・ そう聞こえます。
タモの中で激しく蠢く物体、それは
ハチ! 巨大なクマンバチ!!

当時の私の認識、
ハチに刺される =  死亡

ヤバイ・・・ 非常にヤバイ・・・ 生命の危機です。
周りを見渡します。 そこには物言わぬ墓石が並んでいるだけです。
誰も助けてはくれません。 たった一人で生命の危機を迎えてしまい
ました。 それも墓場で・・・
恐怖   恐怖   恐怖

『うわわああああぁぁぁぁぁぁ・・・』
叫びました。 両手でタモ網を握りしめ、ハチが出てこれないよう
地面に押さえ付けながら・・・

数分後、私は意を決してタモ網をそのままに逃げました。
追ってきているかもしれない・・・
そんな不安に押し潰されそうになりながら走りました。


  教訓
人生いつも一人。 助けに期待してはいけません。
それと、ハチは怖いです。 今でも怖いです。



解りました!