異界空間


近所の子供達と遠出をしました。 行き先は三つ位 隣の町にある
田んぼです。
まだ幼かった私は通り二つ向こうですら未知の領域でしたのでかなり
ワクワクしていた記憶があります。
田んぼでヤゴやオタマジャクシを追いかけて遊んでいるうちに日が
傾いてきました。
良い子であった私はそろそろ帰らないといけない、と思い始めました。
しかし、誰も帰る気配はありません。 みんな私よりも二つ三つ年上
でしたので帰りが遅くなって怒られる時間も私より遅かったのでしょう。
私は勇気を出して 一人で帰る事にしました。

記憶を頼りに来た道を歩きました。 そろそろ知っている道に出る頃だと
思うのですが、行けども 行けども そんな気配がありません。
かなりの道を歩いたにも関わらず、周りは見た事もない建築物ばかり。
その時、ハッキリと感じました。

ここはボクの知っている世界じゃない!!

かつて 浦島太郎は竜宮城へ行き、帰ってきた時には数十年が過ぎていま した。 時間の流れが異なる異界空間。 そんな世界に幼い私は迷い
込んでしまったのです。
もう家には帰れないかもしれない。 もう家族には会えないかもしれない。
不安が幼い私を支配していきます。 既にドコを歩いているのかも解りま
せん。 だんだんと薄暗くなってきました。

帰りたい・・・ 帰りたい・・・ 帰りたい・・・
必死で祈りました。
もうイタズラはしません。 嫌いなコンニャクも食べます。
だから助けて下さい。

願いは通じました。 目の前に見慣れたカンバンが見えてきました。
私は流れる涙も拭わずに走りだしました。
元の世界に帰ってこれたのです。

それからはコンニャクも残さず食べるようになりました。


  教訓
無謀を勇気と勘違いしてはいけません。 ムチャはやめましょう。
それと、外出する時には行き先を家の人に言っておきましょう。



解りました!