麦わら帽子


私がまだ小さい頃、お気に入りの帽子がありました。
それは 麦わら帽子。
いつ買ってもらったのかも判りませんが、外出時はいつもソレを
身に付けていました。

ある日、母親と二人で外出した時の事です。 そこは忘れもしない
赤いボタン事件のあった場所です。

当時、『ロボット刑事』という特撮ヒーロー番組をやっていました。
ジャケットにベレー帽というスタイルのロボットが悪の犯罪組織を
追いかけ、最後に怪人が正体を表すと身に付けていた衣服を脱ぎ
捨て、前よりもカッコ悪い姿になって戦うといった内容でした。

辺りをブラブラしていた時、不思議な感情が起こりました。
何だか自分が自分でなくなるような不思議な感覚。
そう、降りてきたのです。
私の身体に降りてきたのです。
ロボット刑事が!!
初めての憑依体験!!

もはや私の身体はロボット刑事に支配されています。
『ロボットけいじっ!!』
突然そう叫んだ私はあの大切にしていた麦わら帽子を投げました。
帽子はフワフワと目の前を漂い落ちました。
しかし、その帽子を拾う事は出来ません。 何故なら私はロボット
刑事だからです。 ロボット刑事は脱ぎ捨てた衣服を拾う事なく
カッコ悪い姿のままで帰っていくからです。

数秒間 その余韻に浸った後、母親のトコロへ行きました。
『あんた、帽子は?』
母親はビックリして聞きます。 私は一言
『ロボットけいじ・・・』

『拾ってきなさい!』
母の一括により、やっと自分を取り戻す事が出来ました。
ロボット刑事から解放されたのです。 私は先程の場所へと
戻りました。

ありません・・・ わずか数分の出来事だったのですが、麦わら
帽子は無くなっていました。
落し物センターにも行ってみましたがありません。
それが、私の大切にしていた麦わら帽子との別れでした・・・


  教訓
失って初めて判るモノの大切さ。 粗末に扱わず大切にしましょう。
それと、ヒーローは大切な何かを捨てなければ なれないのです。
注意しましょう。



解りました!