Tamaki Hiroshi Fan Site Holic
MW
《公開》2009年 ギャガ・コミュニケーションズ
《原作》手塚治虫
《監督》岩本仁志
《出演》玉木宏 山田孝之 石田ゆり子 石橋稜
《HP》
<手塚治虫禁断の原作の映画化><玉木宏が美しきモンスターを演じる>というふれこみでの本作には大いに期待していた。TVの宣伝でも「善と悪、それは殺人か、祈りか」と何度も見たので、もっと深い映画を期待していた。
玉木ファンのブログも「結城がすてき」という趣旨のものばかりだったのも期待を高めすぎたのかもしれない。
9月の公開最終日に鑑賞したが、はっきり言って期待はずれな作品であった。
問題はストーリーの納得できない展開。
ファンタジーそのものが悪いのではない。玉木宏主演の映画変身、Kids、ドラマ鹿男あをによしすべて現実にはあり得ない設定であるが、作品として筋が通っていて、楽しく鑑賞できた。
しかしながら社会問題提起を目指したと思われる作品では、あまりに現実離れしていると、ついて行けない。
同じように「他国の開発した大量殺戮兵器」をテーマにした、ミッドナイトイーグルよりは、アクション映画として楽しめる場面は多かったことは認める。これはタイでの撮影の成果であろう。
冒頭のバンコックでの追跡シーンはフレンチ・コネクション高架下のカーチェイスよりよかったし、身代金受渡しの2回にわたるトリックも良くできている。特に大がかりな逃走のあとでジェラルミンケースが空であったのにはやられたと思った。
ストーリーの問題点を挙げる。
毒ガスが漏れて、貴船島の住民に被害がでた直後に、ガスマスクを着用し火炎放射器で住民を虐殺することが、原作の1976年ごろでも外部に漏れずに出きたとは考えられない。
なぜなら、外部への連絡が出来ないなら、ほっておいてもMWの威力で島民全員が死んでしまうはずだし、島といっても、本土に少年が泳いで渡れる距離、今から16年前の1990年代なら携帯電話も存在する。
その上、大がかりな隠蔽の黒幕が外務次官であったというのはもっといただけない。
外務省に日本国内で武力を発揮する力があるであろうか?
行政が何かを行うなら、その事実を知る人の数は多くなるはず(地検特捜部が強制捜査に入るときの人数は近頃TVでよく見かけるシーン)。
ミッドナイトイーグルで、<大勢の自衛官が殺され、道路封鎖に大勢の警察官が動員されていたのにも拘わらず>何もなかったことになっているのに違和感を受けたのと同じである。
実際に見せる復讐の第1被害者は虐殺隠蔽に関与した島民とその娘。娘は16歳以上に見えるけど、どうやって島を出たのであろうか。
水に触れると効力をなくしてしまうMWが島の貯水池に格納されているのも不可思議。
また、今の日本で、貯水池に近づいた女性を飛行機から射撃して殺すのも考えられないこと。
まだまだあるがこのくらいにしておこう。
復讐で殺人を行う結城の白い服装。それを知りながら祈るほかに何もできない賀来神父の黒い司祭服。セルゲイ・M・エイゼンシュテインのイワン雷帝(1946)でイワンが「白い祭服に身を包んでいるが、あいつの中身は真っ黒」というイワンとメトロポリタン(ロシア正教の高位僧)の衣装を思い起こした。
賀来の葛藤の表現が聖堂の中での跪いた祈りだけというのも物足りないし、神父が自分のことで祈るのなら司祭室であるべき。
長身で体重を極度にしぼった玉木が常に背筋をまっすぐにしての演技、とくに、料亭での場面は漫画的おもしろさを感じた。
私のお気に入り場面は告悔室のニセ懺悔。皮肉な発声がセクシーですらある
街中で発作におそわれて倒れるところも名演技。
公開前からファンお好みのシャワーシーンは画面も暗く、顔もよく見えずドラマ「のだめカンタービレ」の2回のシャワーシーンのレベルではないとおもった。
玉木宏が次に悪人を演じるときは昔のフランス映画のようなもっと古典的なピカレスク台本を選んでほしい。